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キ・レ・オ 〜 Que les out.
この世界は、くだらねえ!
……涙が涸れちまうくらい、くだらねえ……だいたい、この世界は、ぶっ壊れて色調が狂ったテレビの画面みたいに歪んでいる……512ビットの家庭用ゲーム機の中みたいに、意味もなく人が人を殺してるだろ……まるで他人の命には大した値札が付いていないかのように……非戦闘地域では、親がてめえのガキを惜しげもなくひねっちまう……だから、ガキだって何の躊躇もなく反撃するぞ……鉞の一撃で親の首を飛ばしちまうんだ……よりによってマサカリだぜ……毎晩、金太郎のおとぎ話を読んで聞かせたことが仇となったのか?……笑えねえな……まあ、やられるまえに、やっちまえってことなんだろうけど、あまりにもひどすぎる……かたや、戦闘地域では、まだ世界に触れ始めたばかりの幼児さえも、気化爆弾やクラスター爆弾の被害にあう……C4を抱えたテロリストの車と一緒に、動きの鈍い老人たちが粉々に吹き飛ばされちまう……そんな光景をぶっ壊れたテレビで見てる俺たちのモラルも、すでにぶっ飛ばされ、色調を失っている……なんで、この世界では、こんなにも簡単に、人が人を殺すんだろ?……何気なく世界中で株価が乱高下するように、何気なく変態が変節漢をぶっ殺してるだけのことなのか?……反面、この世界では、ピーターラビットの父親がミートパイにされて人間に食われちまったってのに、そのピーターラビットが人間どもに媚びを売っていやがる……いや、媚びを売ってる振りをして復讐のチャンスを狙ってるのか?……だが、今のところは親を食っちまった人間とは、つかず離れずの関係だ……人類ってのは、そんな絵本をガキの頃から読まされ、ピーターラビットの絵がついた食器で、平然と兎肉入りのミートパイを食ってるんだぜ……あまりにもくだらなくねえか?……この世界はもはや福音された世界ではなく、見上げる青空は昔の青空じゃない……ルーシーがぶっ飛んでいたダイアモンドの青空は、もう、この星には存在しねえんだ……ダイアモンドの青空のように穢れなき平和もなければ、戦後民主主義が創った平和のように、ぬくぬくと広がる嘘っぽい青空も見えない……人類はすでに自分の命と他人の命を分別分別できなくなった……他人を貴重だと思えなくなった世界では、生命が再生されないゴミのように扱われる……そんなくだらない世界に、くだらない人間たちが生かされている……だから、今、この瞬間に世界ってもんが消えてくれればいいと思うよ、マジで!……テレビのスイッチを切るように……一瞬で世界そのものが消えてくれるんなら、それにこしたことはねえ……別に俺は世界を潰滅させてしまいたいほど憎んでるってわけじゃないんだ……なんなら、誰かが俺についてるスイッチを切ってくれてもいい……ぱちん……さよならを言う間もなく真っ暗闇……それなら、それでいいんだ……目の前から、この世界が消えちまうことに、変わりはないんだから……スイッチを切った奴を恨む気もねえ……それが神でもいい……俺は受け入れてやろうじゃねえか!……ピーターラビットでさえ、父親を食ったマクレガー一家を、なかば許してやってるんだからさ……でも、世界は簡単に消えたりしない……だから、今、この瞬間に俺が世界を征服して消しちまうか、あるいは、旧約聖書みたいに神々が俺を断罪して消しちまわないかぎり
……確かなことは、世界も俺もピーターラビットも、簡単には消えたりしねえってことだ………………………………………………
その証拠に、今日、俺はくるくる病院に行かなきゃならねえ……
……もう一度、言うぜ
……くるくる病院に、俺は行かなきゃならねえ!今日!
……今じゃ、文学界も自主規制でそういった病院を、キ○ガイ病院とは言えないらしい……だから、「くるくる病院」ってことで勘弁してくれ……世間じゃ、心療内科とか、内向治療とか、精神科だとかいって、ぶちこまれた奴が世間体を保てる表札を掲げているが、その実は「くるくるぱー」が入ると、なかなか出てこられねえ種類の病院だ……望まないのに、大人になっちまったキティちゃん……すなわち、心神昭明のキティ・ガイだけが入れられる場所だ……正真正銘だったっけか?……まあ、漢字なんて、どうでもいい……ぶちこまれた奴らは、そこから出てきても数日、あるいは、さほど時間をかけずに再び世間から疎まれ、結局のところ現場へ戻ってくる……俺は今日、そんな鉄格子の嵌った病院の椅子に座り、クソ医者の審問を受けなきゃならねえ……それが、「この世界を消したいと思う理由ベスト3」に入ってないとしたら、いかれたテレビ番組のベスト10なんてものは、東シナ海のナマコ以上に意味ねえだろ……まあ、簡単に言えば……とにかく、行きたくねえんだよ!……あの病院に行かなきゃならないと思うと、これ以上、生きていたくなくなる……なんで?……いま、そう思っただろ……なんで、だと?……「なんで?」も「噛んで♡乳首♡」も、ねえんだよ、この野郎!……ってことになるわけだ……第一に、気が向かねえ……つーか、シンプルに、うぜえ……だいたい病院ってのは、何角形なのか、さっぱりわからない角形の眼鏡をかけた医者が、画数もわからなくなるほどの漢字で病状を説明をするような所だからな……「チキンラーメン・カップ・ヴァージョンというのは、略してチキドンと言うんですよ」みたいに聞こえる医学的説明を聞かされても、いちいちわかった振りをして、殊勝な顔で頷かなきゃならねえし……医者の前で良い子にしてないと、途端にカルテへ書かれる病状が重くなる……警察の前で良い子にしてないと、調書に書かれる行状が悪くなるのと一緒だろ……で、医者のご大層な話を聞いても、結局、どこが悪いんだか、さっぱりわからねえ……わかりもしねえのに、やっぱり、最後の会計で高い診察料をむしり取られる……それでも、行かなきゃならねえんだ……なんで?……いま、そう思っただろ……なんで、だと?……俺が「くるくるぱー」の仲間入りをしちまったからだよ、この野郎!……っていうキレ芸になるわけだ……そんな訳で、俺は今日、あと数時間後に、あの忌まわしい病院へ出掛けならなきゃならない……罠にかけられたBlattaria Periplaneta Fuliginosaみたいにゴミ箱送りとなるわけだ……ああ、そうそう……ブラッタリア・ペリプラネータ・フリギノーザってのは、ゴキブリのラテン語における正式学名なんだが、これだけ立派な名前が付けられて地球創生期から生き延びてるにもかかわらず、この世界では軽く「ゴッキー」なんて呼ばれてホイホイ・ハウスとやらで駆除されちまう……世間は公衆衛生の名のもとに、やたらと害虫を駆除したがる……それなのに、害虫みたいな犯罪者には『死刑を執行するな!』と言い張るマダラ・アカが多い……つーか、公衆衛生っていう概念も、よくわからねえ……俺を駆除したいと言うなら、別に反論はねえんだ……いつでも、この世界から駆除してくれ、ってことなんだが……問題は、この世界の行政が、厄介者や異常のある者を、いつも半殺しか、生殺しにするってことだ……生かさず、殺さず、絶滅させず……人間とゴキブリも大差がねえ……くだらねえ新製品の殺虫剤で冷凍瞬殺か、ホイホイ・ハウス=くるくる病院に隔離ってことだろ……はっきりさせてくれねえかな……俺はこのままで生きてていいのか?……そうじゃないのか?……それとも、症例や前例がねえから「判別がつきません」って泣き言をほざくのか?……てめえらクソ医者は、生存権の根源にひれ伏すつもりなのか?……あるいは、社会通念の根本に従って受診者を分別するのか?……とにかく、はっきりしてくれねえかな!……なんで、この俺が「くるくる病院」なんかに行かなきゃならねえんだ!……俺はさ、別に、人類が生まれながらにして持っている福音的拒否権を使いたいってわけでもないんだ……しかし、「くるくる病院」なんかに行きたくない理由は明確にある……第一の理由に加えて、もうひとつの理由だってあるんだ……第二には、金がねえ……病院に行くといいだけ待たされたあげく、クソ医者がちょこっと訳のわかんねえ説明をして、訳のわかんねえ番号札を渡されて、訳のわかんねえ薬をもらうだけで、俺の十日分の食費がふっ飛んでいく……いいか、一日を827円平均で生活してる俺は、松屋の牛丼並盛りなら二十回、落ちぶれていた頃のマクドナルドなら四十回以上は食事に使える金を、病院にむしり取られるんだ……それは辛い…実に、辛かった……挙句の果てに入院となれば、俺にとっては嬌声収容所へ入れられるようなもんだ……おっと、漢字を間違えたんじゃねえんだぜ……俺が強制収容と言わずに嬌声収容所と言ったのには、ちゃんとした理由がある……くるくる病院てのは、いつ行っても嬌声の渦なんだ、マジで……そこら中で患者が雄叫びや嬌声をあげてるからな……それが診察室まで響いてくる……嬌声収容所……アウシュビッツ?……アシュラビッツ?……阿修羅&ピーターラビッツ?……ソルジェニツィンが入ってたのは、どれだっけ?……どれでもねえや……強制収容所=ラーゲリだったな……だからさ、文学者のソルジェニツィンは下痢であろうがなかろうが、ソヴィエト政府にとって厄介者だったから強制収容所へ入れられてたんだろ?……冷血なナチ野郎が、罪もないユダヤ系の人々を一つの鉄路で運び、終点しかない地平へ連れていったように、人は正当も不当も審問されることなく隔離されるケースがあるってことだ……だから、第三の理由は、正当性だ……例えば、人は胃癌になったら、まあ、入院して手術することも仕方ないかなと思うだろ……でも、もし、あんたが聞いたこともない病名なんかで病院に隔離されるのは嫌じゃないか?……正当性を感じるか?……暴れたくならねえか?……暴れねえんだったら、てめえは一生、病院のロビーでうずくまってろ、ボケが!……ってことになる……だからさ、俺は本当に聞いたこともない病気になっちまったんだ……しかも、なぜか原因も治療法もよくわからない奇妙な病気らしい……ある日、耳と脳と心が奇妙な繋がり方をした……それで、医者に言われた……病名は「統合失調性やまびこ症候群による多重聴覚障害」なんだとさ……はぁ?…なんだ、そりゃ?……インフルエンザとか、エイズとか、サーズとか、コロナとか、わかりやすくて大安売りされてる病名があるってのに、よりによって、統合失調性やまびこ症候群による多重聴覚障害、だと?……「簡単に言えば、心の病気で統合失調症の一歩手前の状態です」だと?……何の前触れもなく、耳と脳と心が今までにはない、繋がり方をしただけで、そんな言い方をされるってのか?……なんだか、すごく悲しかった……なんと言えばわかってもらえるかな、その悲しみ……ファイナルファンタジー5の終盤で、アシュラって野郎が次元の狭間にぶっ飛ばされちまった時ぐらい悲しかった……いや、この比喩じゃ、スーファミの時代しか知らない爺さんどもや、プレステしか知らねえ今どきのクソガキにはわからねえだろうな……文学らしく言えば……たぶん、スコット・フィッツジェラルドなら「ホテルリッツのようなダイアモンドを失ったくらいの悲しみ」と言うかもしれない……トルーマン・カポーティなら「磨き上げた銀の食器のように目映い冬の朝を迎えたくらい悲しかった」と言うだろう……中原中也なら「小雪のかかってちぢこまった皮衣のように汚れちまった悲しみ」とでも言うかもしれない……つまり、普通の悲しみとは、はっきり分別できるくらい悲しかったということだよ!……人は望まないのに気が狂うのか?……それとも望むから気が狂うのか?……人はただただ、他人からの忌避で自分が狂っていることに気づかされる……しかし、狂っていることすら、もはや問題ではない地平に旅立つこともできるんだ……それが真に狂うというコトなんだろう……それは人が「オノレの自我」など問わなくてもいい地平に立つことだ……確立された「ワタシ」なんてものは存在しない……あるはずもない……望むだけムダだ……そういった意味で、俺はまだ半狂いにすぎない……狂気からみて半人前……小モノだ……だから、俺はキレにキレまくって、こうして、この時代にルイ=フェルディナン・セリーヌを甦らせているってわけだ……涙ぐましい時代錯誤だろう?……でも、こんな罵詈雑言は、まだ序の口だ……紛いなりにも、これは文学であり、暗黒ラップだからな……現実の世界は、もっと薄汚い……世界には、死ぬほどくだらない窓が無数にある……そう言ってピンとこねえ奴は、暖かい墓の中でマイウェイでも歌ってろ、ボケ!……ってことになる……その窓を覗いちまった時の感想は、こうだ……ガキの頃、悪戯でマンホールの開けた瞬間の悪寒!……ネットの住人諸君!……SNS、万歳!……か?……なにが「バズる」だ?……なにが「バエる」だ?……てめえらは、まだまだ蛆虫にすぎない!……早いとこ、立派なクソバエになれ!……とっとと、アバズレろ!……さもないと駆除されるぞ!……マンセー、マンセー、マンセー!……デブバエ独裁者が、オマエらに向けて、また屁みたいなミサイルを発射してくるぞ!……ユーラシアのプッチン野郎が、いきなり戦車で侵略してくるぞ!……純白に生まれた鳩も、あっという間に灰色へと化すSNSという地下世界……人間穴、マンホールの底……刹那の欲望と灼熱の退廃が渦巻き、穢れをいとわないハエどもがむらがる背徳の楽園……そんなところに居続けるから、無痛覚になるんだ……
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