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「すまん、今日だけは、帰らせてもらうぞ」
「姪御さんのお誕生会でしたよね。早く行ってあげてください」
「ありがとう!」
格納庫から更衣室へひた走り、怒涛の勢いで私服に着替えたキャサリンは、戦艦から地上の基地につながる宇宙エレベーターに乗り込む。
エレベーターをでれば、すぐに自家用フライングカーの停車場。
フライングカーに乗り込んだキャサリンは、すぐさまエンジンをかける。
助手席にはリボンを巻いたメガジャンボサイズのくまのぬいぐるみ。
約束の時間は大幅に遅れてしまうが、プレゼントを手渡すくらいはできそうだ。
メリッサに初めて会ったのは、まだ生まれてまもない頃のこと。
あの子を抱っこした時の、ぬくもりと感動を、今でも覚えている。
「また、会いにくるからね」
けれど、インベージ星人が地球に侵攻してきて、その約束は今日までずっと、叶わないままになってしまった。
“氷の撃墜女王”なんて二つ名をもらって、みんなが自分を英雄みたいに扱うけれど、本当のところはぜんぜんちがう。
私が努めて冷静でいるのは、死にたくないだけの臆病者だから。
ただ、生きて、またあの子に会いたかったから。
それだけを願って、私は戦い抜いてきたんだ。
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