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「雪穂…お前さぁ、美鳥の話題してる奴にいちいちケンカ吹っ掛けんなよ」 楓は腕を掴みながら大きくため息を吐く。 「美鳥のこと何にも知らないのに!!悔しい!!二人は悔しくないの?」 「…俺たちだって悔しいよ」 そういって湯井は親指で私の涙を拭った。 「でも、あんな奴ら相手にすんの時間の無駄じゃん」 そんなの分かってる。 分かってるけど、割り切れないのだ。 通りすがる人達が笑っていると、みんな美鳥の話をしているんじゃないかと不安になってくる。 巧妙に事実が交ぜられた噂は信憑性もあり、退屈な学生達のいい暇つぶしで、そんな娯楽に浪費されるのが悲しかった。 美鳥の姿見てもみんな笑えるの?本当に自業自得だと思うの? 仮に自業自得だとして、それはあんな風に傷つくほどの罪なの? 「…あの日、美鳥と遊んでおけば良かった…」 「うん…」 「湯井と会わずに、美鳥のそばにいれば良かった…」 「…うん、ごめん」 湯井は何も悪くないのに私の一方的な八つ当たりに文句も言わず頭を撫でて、その優しさがまた辛かった。 楓は落ちた鞄の砂を払い散らばった荷物を拾ってくれた。 いつもなら、きっと荷物を拾ってくれたのはハカセだっただろう。 そして、その土埃を払って綺麗にしてくれるのは美鳥だっただろう。 「美鳥に会いたい…」 「…な。俺も」 そして、私たちを更に落ち込ませる出来事が起こった。 『警察から連絡。事件性なしと判断。捜査打ち切り』
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