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「一応捜査は続けますけど、大した手がかりはないかと」
一通り話を聞いた警察達は手帳に何やら書き留め、どうせ大した事件ではないだろうと決めつけた態度だった。
震える美鳥のお母さんの手を握りしめ、警官を睨む。
「お願いします、犯人捕まえて下さい!」
掴みかかりそうな湯井を楓がどうにか止めていて、ハカセはずっと俯いている。
「しかし、状況が状況ですから。先ほども言ったように合意の可能性が高く」
「っ!だから!それが何かの間違いです!美鳥はそんな子じゃありません!何かに巻き込まれたに決まってます!」
年配の警官はまるでクレーマーでも見るような、私が言うことなど何ひとつ信じていない表情だった。
「君だって、美鳥さんと24時間ずっと一緒にいる訳じゃないだろ?」
「何言って…」
物分かりの悪い人に言い聞かせるように、殆ど確信している表情で、あえてゆっくり大きな声で言った。
「君たちが知らない友好関係や、趣味、嗜好があってもおかしくない」
「違うのに…」
「何か分かったら、またすぐに連絡します」
全く取りつく島のない態度で、警察は背を向けあっという間に去ってしまった。
その時、病室の中から「おかーさん?」という声が聞こえてきた。
美鳥のお母さんは溢れた涙を拭ってなるべく明るい表情で入り、5分くらい経ってから「雪穂ちゃん、入って?」と小さな声で病室に呼ばれた。
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