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理解が追いつかないまま呆けていると、湯井が「雪穂!一旦出るぞっ」と私の肩を掴み無理やり外へ出した。
バタバタと慌ただしく看護師達がやって来て、楓もハカセも外へ追い出された。
ハカセは体をワナワナとさせ私に掴みかかってくる。
裏切られた、とでも言いそうな程に憎しみの篭った目だった。
「姫っ!!!何を知ってるんですか!?美鳥に何があったんですか!?!?」
湯井と楓が必死に「やめろ!」と後ろから押さえつけるが、伸ばされた手が私の襟元を掴みただ揺さぶられるしかない。
「なんで姫を怖がるんですか!?なんで!なんで!!!」
なぜ名前を聞いただけであんなふうに取り乱したのか、私にも分からない。
力なく首を横に振ると、涙がじわりと溢れ出た。
「知らない…何も知らないよ…」
「そうだぞ、ハカセっ!落ち着け!!大体雪穂は、美鳥が外泊始めた日は俺と会ってたんだから」
その言葉を聞いてハカセは手から力を抜いた。
ハカセの爪が掠ったのか、鎖骨の下がヒリヒリと痛む。
そして、爪のない美鳥を思い出してまた涙がでた。
「ごめん、なさい、姫。姫が悪いわけないって分かってるんです」
ハカセが項垂れ、床に膝をついた。
縋り付くように私に手を伸ばしてくる。
「でも、なんで美鳥があんな目に。一体何が。知りたいだけなんです…」
その手は私の体へたどり着く前に力なくぶらりと垂れ下がり、床を抉るように爪を立てながら拳をつくると、そのまま鈍い音を立て地面を叩いた。
「僕はただ、美鳥を守りたいだけなんです…」
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