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「お願いだから、ハカセがそんなこと言わないでよ…」 美鳥と一番付き合いが長いのはハカセだ。 美鳥を一番大事に思って、大切にしてきたのもハカセなのに。 ハカセの拭いきれなかった涙がポタポタと机の上に落ちていく。 「この2週間、僕なりに一生懸命調べたんだ」 楓は、振り絞るようにか細く話すハカセの背中をさする。 「○○地区にも行った。そこの人達に聞き込みもした。店にも行ってみた。でも、丸っ切り、何ひとつ、本当に、情報がないんだ」 ハカセは唇を切れそうな程強く噛み締めた。 「調べれば調べるほど自信がなくなる。自分が思うより、僕は美鳥の事を知らないんだ。って」 「そんな事、ない。ハカセが一番美鳥を知ってるよ!」 私の言葉にハカセは自嘲気味に笑って、それは姫の方だよ、と言った。 「僕は今まで、美鳥に嫌われたくないあまりに深い話をしてこなかった。幼馴染なら、友達なら、好きな相手なら、遠慮せずもっと色々話せば良かったのに」 ハカセが顔をあげ、涙を零しながら私を見つめた。 「ねぇ、姫。姫はどこまで美鳥を信じれる?」 僕は分からなくなった。 そう呟くハカセがあまりにも痛々しくて、悲しくて、私たちは慰めることすら出来なかった。
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