15人が本棚に入れています
本棚に追加
「お願いだから、ハカセがそんなこと言わないでよ…」
美鳥と一番付き合いが長いのはハカセだ。
美鳥を一番大事に思って、大切にしてきたのもハカセなのに。
ハカセの拭いきれなかった涙がポタポタと机の上に落ちていく。
「この2週間、僕なりに一生懸命調べたんだ」
楓は、振り絞るようにか細く話すハカセの背中をさする。
「○○地区にも行った。そこの人達に聞き込みもした。店にも行ってみた。でも、丸っ切り、何ひとつ、本当に、情報がないんだ」
ハカセは唇を切れそうな程強く噛み締めた。
「調べれば調べるほど自信がなくなる。自分が思うより、僕は美鳥の事を知らないんだ。って」
「そんな事、ない。ハカセが一番美鳥を知ってるよ!」
私の言葉にハカセは自嘲気味に笑って、それは姫の方だよ、と言った。
「僕は今まで、美鳥に嫌われたくないあまりに深い話をしてこなかった。幼馴染なら、友達なら、好きな相手なら、遠慮せずもっと色々話せば良かったのに」
ハカセが顔をあげ、涙を零しながら私を見つめた。
「ねぇ、姫。姫はどこまで美鳥を信じれる?」
僕は分からなくなった。
そう呟くハカセがあまりにも痛々しくて、悲しくて、私たちは慰めることすら出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!