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疲れた面持ちで家に帰ると「姉さん最近元気ないね」とソファで寛いでいた波留が声をかけてきた。
「あ、うん…ちょっとね」
波留に全部を話すのは憚れて言葉を濁す。
「姉さん、お腹空いた?」
「うんん」
「…最近ちゃんと食べてないよね?」
病は気からって言うよ?と波留は私をダイニングチェアに無理やり座らせてキッチンに向かう。
考える事すら疲れて、方肘をついて顎を手のひらに乗せ、慣れた手つきで料理を作る波留を眺める。
相変わらず美しい姿は、女物のエプロンをしてても全く損なわれない。
いつ作り終わったのか、ボーッとしていたら目の前に丼とお箸が置かれた。
湯気が立ち上がるキツネうどんが美味しそうで小さくお腹が鳴ると、波留はクスリと笑ってから目の前の椅子に腰掛けた。
熱いうどんを啜るとホッと体が温まり、自分がずっと緊張していたことに気づく。
「おいしい」
「良かった」
息を吹きかけ冷ましながらゆっくりと啜っていく。
「…ねぇ、波留。波留はさ、聞いた?」
「ん?何を?」
ちらりと盗み見た波留は、嬉しそうに私が食事する姿を眺めていて、気まずさに目を逸らす。
「…美鳥の噂」
「あぁ、少しね。そのせいで最近悩んでるの?」
「…うん」
他学年にまで噂が広がっている事に驚き、美鳥の事件をもっと調べてみようと思った。
波留は真面目な目つきをして「姉さん」と呼ぶ。
「何?」
「僕は、姉さんが一番大事なんだ」
「…」
「だから、危ない事には首を突っ込まないでよ?」
「…」
私の考えに気付いたのか、波留が不安げな声で言った。
その忠告を守るつもりはなかったけれど、深緑の瞳が真っ直ぐ私に注がれて、押し黙るように私はまた食事に手を伸ばす。
そんな様子を見兼ねたのか大きくため息を吐いて「父さんにお願いしてみれば?」と言った。
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