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「な、んで、笑ってんの」 「笑ってた?僕が?こんなに傷付いてる姉さんの前で笑うなんて」 ありえないよ、とまた小さく微笑む。 そうだ。 波留はこういう奴だった。 私の事を大事だと言うくせに、私が傷つくと嬉しそうにするのだ。 だから、私はずっと波留が嫌いだった。 この世で一番信用ならなかった。 それを、たかが数ヶ月平穏に過ごしたからと、なぜ忘れていたんだろう。 「出てって」 「姉さん」 「出てってよ!!」 悔しくて投げつけた枕は軽く(かわ)され、今度はクッションを投げつけようとした手首を掴まれた。 手から離れたクッションは音も立てずにベッドにぶつかり床に落ちる。 「僕はね、正直美鳥さんが噂通りの人なら姉さんにはもう関わって欲しくない」 「何で、波留までそんなこと言うの?一緒に遊んだじゃん」 「あれくらいじゃ、本性なんて分からないでしょ?」 「美鳥は絶対に巻き込まれただけなんだからっ!」 だって、美鳥はいい子なのに。 優しくて、思いやりあって、面白くて。 大切な子なのに。 波留が私を宥めるように手首を引き寄せて、そのまま胸で抱き留めた。 細いと思っていた波留は鍛えているのか意外にもがっしりとしていて、やはりいつもの甘い匂いがした。 「姉さん、現実見よう?」
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