僕は役立たず~とある1円玉くんの悩み~

3/5
前へ
/5ページ
次へ
「そんなことないですわ」  それまで黙って見ていた500円玉さんが初めて口を開きました。 「私たちはあなたが集まって出来た硬貨。あなたがいなければ私たちは生まれないのよ?」 「そうだそうだ!」  それを聞いた5円玉さんも、10円玉くんも、50円玉さんも、100円玉くんも、みんな500円玉さんに続きます。 「私たち、あなたが集まってできてるのよ!」 「君がいなけりゃ僕らは生まれないんだ!」 「あなただって立派に役に立ってるわ!」 「でも……」とうつむく1円玉くんに100円玉くんが言いました。 「元気出せよ。オレだってこの前、100枚の1円玉と交換されたんだぜ? 『100枚の1円玉より1枚の100円玉のほうが使いやすい』って言われてさ!」  余計な一言に5円玉さんも10円玉くんも50円玉さんもポカポカと100円玉くんを叩きました。 「あなたは!」 「どうして!」 「余計なことを!」  100円玉くんはポカポカと叩かれながら「ひーん」と頭を抱えました。  それを尻目に1円玉くんはひっくひっくと泣き出しました。 「やっぱり……僕なんていらない存在なんだ……」  うわーん、と声をあげる1円玉くんにみんな困り果ててしまいました。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加