僕は役立たず~とある1円玉くんの悩み~

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 みんなと一緒に会計のトレーに乗せられた1円玉くん。  そんな店員さんとのやりとりを1円玉くんは目をうるうるさせながら聞いていました。  初めて人から「あってよかった」と言われたのです。  それをすぐ隣で見ていたみんなは「ほらね」と笑いかけました。 「君だって十分役に立ってるじゃないか」 「君がいなくて買えなかったものだってあるんだから」 「あなただって立派な硬貨なのよ」  瞳をうるうるさせている1円玉くんに、みんなはそう言ってウィンクをしてみせたのでした。 「みんな、ありがと……」  1円玉くんは泣きながらお礼を言うと、レジの中に吸い込まれていきました。  それからというもの、1円玉くんはどこに行っても自信を持ってポケットの中の財布におさまるようになったということです。 おしまい
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