僕は役立たず~とある1円玉くんの悩み~

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 ある日、ポケットの中にしまわれている財布の中で1円玉くんが、5円玉さんと10円玉くんと50円玉さんと100円玉くんと500円玉さんを見まわして言いました。 「みんなはいいなあ」  5円玉さんがそれに反応して尋ねます。 「あら、どうして?」 「だってみんな、人から喜ばれる硬貨なんだもの」  5円玉さんも10円玉くんも50円玉さんも、きょとんとして首をかしげます。  首をかしげながら10円玉くんが手を挙げて「どういうこと?」と尋ねました。  1円玉くんはみんなを一枚一枚指さして答えました。 「だってさ、5円玉さんはお賽銭(さいせん)として使われるでしょ?」 「うんうん」 「10円玉くんはお菓子を買うのに使えるでしょ?」 「うんうん」 「50円玉さんはお釣りを細かくしないために使えるでしょ?」 「うんうん」 「100円玉くんは自動販売機でジュースを買うのに使えるでしょ?」 「うんうん」 「500円玉さんはランチを食べる時に使えるでしょ?」 「うんうん」  そう言って最後に自分を指さしました。 「僕は一枚じゃ何もできないもの。誰からも喜ばれないんだ」
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