きっとまた会える。

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 医者の提案通り、俺はバイトを辞めた。  ただ、実家に帰るのは先延ばしにした。  一人暮らしの部屋で毎日、横になって過ごした。  そんな生活をしていたとき、たまたま調子が良かったときがあったので、俺はいつの日か、彼女に笑われたオカルト関係の書籍が並ぶ本棚に手を伸ばし、一冊の本を手に取った。そこで現実逃避がてら読むつもりだった本の内容に、俺は引き込まれた。 『死者と会う方法』  そんなページがあったのだ。  途端、気力が回復するのを感じた。俺はオカルトサークルに入っていただけあり、世間一般のようにオカルトを「インチキだ」と一笑に付したりはしない。俺は藁にも縋る思いで、そこに書いてあった方法を実施した。詳細は省くが、魔術のような感じで、いろいろと面倒な用意が必要だった。  その方法を試したあと、俺は彼女が轢かれた歩道に向かった。会える気がした。  歩道に着くと、そこには花が置かれていた。誰かが置いてくれたのか。しかし、そこに彼女の姿はなかった。俺は涙が込み上げてきた。実際のところ、俺は分かっていた。死んでしまった人間と、会えるわけがないことを……。でも、まだどこかで彼女に会える気がしていた。  しばらく黙祷し、帰ろうとした。  そのとき、「危ない!」と叫び声が聞こえた。俺に向けて言われた気がした。その瞬間に、けたたましいクラクションの音。  意識が無くなるまでのあいだ俺は「きっとまた会える」と心の中でつぶやいていた。
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