転移

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転移

 旦那様は私のことを対等に扱ってくれるのね。下界では、男尊女卑の風潮が強かったから、なんだか新鮮だわ。  『天界では、これが普通なのか?』と思案しつつ、私は頬を緩める。 嬉しい気持ちでいっぱいになる中、旦那様はゆるりと口角を上げた。 「一通り話も済んだし、そろそろ僕の管理する領域へ行こうか。目的地まで転移するけど、大丈夫かい?」 「転移は初めてなのでよく分かりませんが、恐らく大丈夫です!」 「そっか。じゃあ、何かあったら遠慮なく言ってね」 「はい、分かりました!」  こちらを気遣ってくれる旦那様に一つ頷き、私はニッコリと微笑む。 転移での移動にもちろん恐怖心はあったが、それ以上に好奇心が(まさ)っていた。 『転移って、どういう感じなのだろう?』とワクワクする中、旦那様は再度こちらに手を差し出す。 「では、手を握ってくれるかな?転移する際は、対象と接触していないとダメなんだ。まあ、転移のことがなくても、僕はメイヴィスと手を繋ぎたいけどね」  茶化すような口調でそう言ってのける旦那様は、悪戯っ子のように微笑んだ。 瞬く間に頬を紅潮させる私は、『冗談でも嬉しいわね』と目を細める。 満ち足りた気分になりながら、私は差し出された手に自身の手をそっと重ねた。 旦那様の手は私よりずっと大きくて、暖かくて……何より、とても綺麗である。 手の甲には美しい紋章があり、太陽の形を象っていた。 「それじゃあ、転移するから絶対に手を離さないでね」  繋いだ手をギュッと握り締め、旦那様はこちらに注意を促す。 『分かった』と頷く私に、満足気に微笑むと────旦那様はじわりと力を高めた。 神の力に不慣れな私でも分かるほど多くの力を引き出し、彼は意識を集中させる。 手の甲に刻まれた太陽の紋章が力の高まりに応じて、光り輝いた。 「────飛ぶよ」  そう言うが早いか、私達は白い光に包み込まれる。 反射的に目を瞑る私は、『転移って、眩しいものなのね』と驚いた。 旦那様の存在を確認するように繋いだ手をギュッと握り締める中、白い光は十秒ほどで消え去る。 好奇心に促されるまま目を開けると、そこには美しい光景が広がっていた。
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