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天使
「────レーヴェン様ぁぁぁぁああ!!やっと見つけましたよぉぉぉおおお!!」
絶叫しながら私達の前までやってきた天使は、慌てて急停止する。
ブワッと巻き起こる風に難儀する中、天使は地上へ舞い降りた。
そして、切羽詰まった様子で旦那様の両腕をガシッと掴む。
「レーヴェン様!!今まで一体どこに行っていたんですか!?レーヴェン様がなかなか戻って来ないから、仕事が溜まりまくってますよ!!」
「はははっ。悪いね、天界へ来た花嫁を迎えに行っていたんだ。仕事は後でまとめてやっておくから、安心しておくれ」
「絶対ですからね!?ちゃんと仕事をやって下さいよ!!────って、ちょっと待った!!今、なんて言いましたか!?」
怒ったり、驚いたりと忙しい天使は、バサバサと羽根を動かす。
落ち着きのない天使を前に、平常心を保つ旦那様は笑顔のままだった。
「だから、仕事は後でまとめてやっ……」
「その前です!!」
「その前……?あぁ、なるほど」
天使の言わんとしていることが理解出来たのか、旦那様は納得したように頷く。そして、私の肩をそっと抱き寄せた。
「この子が僕の花嫁のメイヴィスだ。どうだい?物凄く可愛いだろう?」
自慢とも惚気とも捉えられる言葉を発し、旦那様は得意げに胸を張る。
天使はようやく私の存在に気づいたようで、じっとこちらを見つめた。
頭のてっぺんから足の爪先までじっくり観察した天使は、ようやく満足したのか、そっと目を逸らす。
「お美しい方ですね。ここまで綺麗な人、見たことないです」
「だろう?僕もメイヴィスが花嫁で本当に良かったと思ってるよ」
裏表のない真っ直ぐな言葉で褒められ、私は少し照れてしまった。
僅かに頬を上気させ、褒め言葉を噛み締める中、天使は不意に跪く。そして、下から顔を覗き込むようにこちらを見上げた。
「偉大なる我が主レーヴェン様の花嫁である、メイヴィス様。私はレーヴェン様に仕える天使の一人、カシエルと申します。これから、関わる機会が多くあると思いますので、どうぞよろしくお願い致します」
天使────改め、カシエルは真剣な面持ちで頭を垂れる。
黄金に光り輝く金髪がサラリと揺れ、茶色がかった瞳に影を作った。
礼儀正しく振る舞う彼を前に、『さっきまでとは別人ね』と驚く。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そう言ってニッコリ微笑めば、カシエルは『もっと砕けた口調でいいですよ』と笑った。
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