覚醒《ハワード side》

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覚醒《ハワード side》

「メ……下界の……聞く……」 「魂を……して……復活……」  深く沈んだ意識の底に、聞き覚えのない声が届く。 思考がぼんやりしているせいか、認識できた言葉はほんの僅かで、何の話をしているのか全く分からない。 でも、男性二人の会話であることは辛うじて理解した。  一体、誰なんだ……?騎士……?いや、司祭か……?参拝者という可能性もあるな……。もしくは騎士とか……騎士とか……騎士とか……あれ?これはさっきも言わなかったか?  私は何とか会話相手を割り出そうとするものの……考えた先から思考がどんどん溶けていく。これでは、まともに推理することも出来ない。 『もはや、特定は不可能だ』と諦めかけた瞬間────深い海の底から引っ張り上げられるように、意識が浮上した。  あ、れ……?一体、何が……?さっきまで意識がぼんやりしていたのに……。 「────儀式は無事成功したみたいだね。問題なく復活出来て、良かったよ」  先程と違い、ハッキリと聞こえた声に釣られ、私は目を開ける。 そして、真っ先に目に飛び込んできたのは────見目麗しい御仁の姿だった。 「────やあ、初めまして。僕は生命を司る神レーヴェン。こっちは天使のカシエルだよ」  出会って数秒で自己紹介を始める御仁────改め、レーヴェン様はゆるりと口角を上げる。 一緒に紹介されたカシエル様は、ペコリと小さく頭を下げた。  か、神……!?天使……!?一体、どういう事だ!?どうして、私の前に人智を超えた存在が二人も……!?  想定外の事態に動揺し、飛び起きた私は一瞬だけ『誰かのイタズラか?』と疑う。 でも、カシエル様の持つ白い翼を見て、直ぐさま考えを改めた。 戸惑いながらも何とか現実を受け入れ、『ここはどこなんだろう?』と視線をさまよわせる。  本棚や資料で溢れ返った空間はインクの匂いが染み付いており、執務室のようだった。 先程まで横になっていたソファは、恐らく来客用のものだろう。 『死後の世界にも執務室があるんだな』と少し驚く中、レーヴェン様は私の顔を覗き込む。 「君の名前は?」 「えっ?えっと……ハワードです。以前は神官長の地位に就いていました」  戸惑いながらもしっかりと質問に答えた私は、躊躇いがちに黄金の瞳を見つめ返した。 パチパチと瞬きを繰り返す私の前で、レーヴェン様はニヤリと笑う。 「元神官長なら、好都合だな」 「えっ?」 「いや、何でもないよ。それより、状況を説明するね」  適当に話をはぐらかしたレーヴェン様は困惑する私を置いて、さっさと次の話題に移った。 「まず、ここは天界────所謂、死後の世界だね。死んだ者の魂は全て天界に集められる。まあ、ここで意識を取り戻す魂は少ないけど……大抵は直ぐに生まれ変わるから」  レーヴェン様は何食わぬ顔で、聖書に記載されている輪廻転生をあっさりと肯定した。
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