ひな祭りの宴

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 ぎりぎりと目を吊り上げる。 「お前がどれだけ力が強くても、壊しちゃえば何も問題ないよね? これ以上うちの守り神様たちに負担もかけたくないし。たかが五万、お小遣いですらないやっすい値段だし」  ぴくり、と震える。白かった顔が、さらに真っ白になった。かたかた、と。地震でもないのに人形が震えている。通りかかった店員に、笑顔で声をかけた。 「すみませーん。これください」 「かしこまりました」  スキップでもしそうな店員。よかった、売れなくて困ってたんだ、という声が聞こえた。そりゃそうか、場所取るし邪魔だもんね。人形を鷲掴みにしてそう語りかけると。ひな人形は涙をこぼす。 「やだ、湿気が汁になってあふれ出てきてる。不良品じゃん。あのお、値引きしてもらえませんかあ?」  戻って来た店員にそう言うと、慌てて頭を下げて30%割引してくれた。さっさと引き取ってほしいのだろう。 「呪われたくないから、ちゃんとお祓いしてからにしよう。知ってる? お焚き上げって」  にっこり笑って語り掛ける。 「燃やすんだよ、炭になるまで徹底的に。ま、人形には意識も魂もないから、問題ないよね。もし意識があったら、地獄のような苦しみだろうけど関係ないわ」 「……~~~」 「なあんか聞こえた気がしたけど、気のせい気のせい。人形はしゃべらないし。さて、予約の連絡いれよう」  スマホを取り出し、そうだ、と思い出した。声をひくくして、思いっきり顔を近づけて語り掛ける。 「会いたかったよ。金ばっかかかってたお母さんを殺してくれて、ありがとう」
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