【計画的な無計画】

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【計画的な無計画】

12月某日。 世間は年末ムードの中、僕らは(物理的に)それより少し先を見据えて過ごしていた。 それまでに僕らは何度か通話を行い、大まかな観光の流れやホテル、航空券を決めていった。 僕はこの、「計画を立てる」ことが大好きだった。いや、プランを立てている間が一番ワクワクすると言っても過言ではないかもしれない。もちろん、プラン通りに行くと気持ちいいということもある。しかし一番大きいのは、まだ見ぬ体験への期待感が最も高まる時期だからだと思う。 たまに、実際に足を運んで、見たり体験したりして、期待よりも下振れすることがある。しかしこの時でも、計画段階の期待値は高いままである。故に、最も楽しんでいるのはこの時期かもしれない。もちろん、ノープランで行くのもそれはそれで楽しいと思うが、個人的な好みは断然、計画派である。 そして、今回の具体的な計画は以下のようなものだった。 まず、1月4日〜7日の3泊4日。そして航空券に関しては、僕は神奈川に、友人は京都に住んでいるため、それぞれ羽田空港と関西国際空港から別々で向かい、現地で集合して現地で解散するということに決まった。 そして、沖縄での観光に関しては、お互いの重視するポイントを一つずつ、絶対に組み込むことを意識した。僕の要望はダイビング、友人の要望は沖縄で現地の人々と触れ合うことだった。具体的には、民謡居酒屋で呑みたいということらしい。 結果、次のようなプランに落ち着いた。1日目は空港からバスで読谷村へ向かい、宿に泊まる。そして2日目の午前中に僕の念願のダイビングをして、その後アメリカビレッジで夕食。その次の3日目は、日々のバイトやサークル、勉強の忙しなさから解放されてゆっくりしようと考え午前中はノープランで、夕食に友人の念願の民謡居酒屋に行くという予定に決まった。そして4日目はフライトの時間まで適当に過ごそうという結論に至った。 随分とダラダラしており、ノープランのように思えるかもしれないが、仕方のないことだった。もちろん、僕も友人も様々な観光地を調べ尽くしたが、今回の旅行には一つ制約があった。それは、「レンタカーなし」、という点である。友人は京都で何度も運転しているが、僕の方がペーパードライバーであるためだ。免許取得以来、免許証に触れたことは片手で数えるほどしかない。そしてそのうちの一回は、実際に親の車で運転した際に触れた一回である。しかし、結局その時は広い駐車場をクリープ現象でびくびくしながら走り回っただけであった。それが唯一の教習車以外の車を運転した経験である。故に、友人に何かあった場合に対処ができない上に、友人にだけ運転してもらうのは申し訳ない、という気持ちがあったのだ。 そのため、僕たちには(僕というお荷物のせいで)バス移動という制限があった。 そのため、僕らはホテルの取り方を少し工夫することにした。1日目はダイビングの主催場に近い中部の読谷村の宿に、2日目はアメリカンビレッジに近い北谷町の宿に、3日目は国際通りに近い那覇市の宿に、それぞれ泊まることにした。少しずつ南下していくという計画である。これにより時間的な移動コストを最小化できた。また、金欠学生の僕らは、各宿、1人2,000円ほどの宿を予約したのだが、それ相応の(自業自得の)カウンターを受けることになるのだが、それはまた少し先の話である。 そうして、僕らの計画は大まかに決まっていき、12月の下旬に最終確認をするために友人と通話をした。その際に、僕はある提案をした。マングローブを見ることができるカヤック体験である。どうせ沖縄まで高い航空券を払って行くなら、せめてもう一つアクティビティをしたかった。そして友人もそれを了承してくれ、2日目のダイビングの後に行くこととなった。少しキツめの旅程ではあったが、3日目と4日目にゆっくりすることを鑑みれば、ちょうど良いと言えた。   〜続〜
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