【怒涛の1日 part1】

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【怒涛の1日 part1】

そして数日後の、2024年の1月1日。この日から少しずつ旅程の歯車が狂い始めた。 みんなに「明けましておめでとう」を送った後、僕は朝早くから初日の出を見に行った。とても綺麗だったのを覚えている。太陽はとても明るく丸く輝いていた。 「どうか、今回の旅行も明るく、そして丸く終われますように。」僕はお日様に向かってそう願った。 が、その願いは午後には受理されることなく突き返された。 昼ご飯を食べた後、不意に、友人から電話がかかってきた。 僕は呑気に新年の挨拶をする。 「明けましておめでとう〜。」 すると、しばしの沈黙の後、霞んだ声が聞こえてきた。 「ごめん。インフル。たぶん。」 「え?は?」 「昨日、サークルの飲み会あったんやけど、唐揚げ作ってる時に体熱いな〜って思って体温測ったら37.8°やった。」 「マジか。」 「んで、ちょっと前にうちのサークルでインフル流行ってたんよ。多分それやわ。」 「マジか。いや、けど、虎次郎は超人やからワンチャンあるかもしれん。」 「え?」 「いや、富士山登った時、下山してから新宿〜渋谷を徒歩で歩いた後に家に戻ってきたやん?」 「あね。やで、今回もワンチャンあると思う。一旦今日はゆっくり休んで、明日まで様子見るか。」 「おけ。」 「じゃあ、また。お大事に。」 「おん。」 ツー、ツー、ツー。 マジか。いやいや、一人旅はつまらんて。元から一人旅計画してたんならわかるけど、急な一人旅はつまらんて。マジか。はぁ、寝よ。 それから僕はふて寝し、起きると夕方の4時半だった。そして、ふと連絡が来ているのが目に入った。 「地震、大丈夫?」 は? 調べてみると、僕の地元の福井からほど近い石川県で地震が起きたことを知る。そして、友人のLINEに帰省していないから平気だという返信をした後、すぐさま家族へ安否の確認を行う。 「地震大丈夫?」 急に電話をかけても、避難中とかであればパニックになると考え、メッセージだけを送ってしばらく待つ。 が、なかなか返信が返ってこない。どうかまだ夢の中であってくれ。いや、新年の初夢にしては最悪だ。だが、現実よりはマシだ。そう祈りながらも、少しずつ目が覚めていき、現実であることを再認識する。不安になりながらもじっと待っていると、返事が返ってきた。おそらく、その間は30秒ほどだったが、体感では3分はあった。 「今のところ特に変わりありません。」 少しずつ拍動が落ち着いていく。いやに長ったらしい文だな、おい。などと心の中でツッコミを入れる余裕も出てきた。 そして、母と妹は買い物に行っているとのことで、しばらくして2人からも無事だという連絡がきた。どうやら家の中も特に大きな被害は無かったようで、一安心だ。 が、少し、いや、かなり幸先が芳しくない。 どうしたものかと不安になりながら、溜まっている課題を片づけるためにペンを握る。 結局、それから2時間ほど経ったが全く進まなかった。 諦めて、ベッドに横になり、軽く目を閉じる。その時、ふとスマホから着信音が鳴った。すぐさま反応すると、虎次郎からだった。 「もしもし、どうした?てか、地震大丈夫やった?」 「おう。家族も無事。」 「こっちも同じ。お互い良かったな。」 「そやな。で、それとは別なんやけど、今さっき寝て起きて熱測ったら36.7°やったわ。」 「は?強すぎん?何食ったらそんな秒で治るん? 笑」 「コンビニの次郎ラーメンとヨーグルトやな。」 「は?いやいや、そんな体に悪そうなもん食って治るんか笑」 「凄いぞ、あれ。マジで回復する。」 「お前だけやわ。まあ、治ったなら何よりや。」 「ただ、ちょっと耳鳴りがあるから、ダイビングは難しいかも。」 「そっか…。まあ、またそれもどうなるか分からんし、とりあえず今日も早よ寝ような。」 「おけ。」 「じゃあ、また明日確認するわ。」 「おけ。おやすみ〜。」 「おやすみ〜。」 ツー。ツー。 彼は本当に超人の域に達しているらしい。 とりあえず一人旅の可能性は今のところ無くなりそうで良かった。そう思い、僕は眠りについた。 〜続〜
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