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会話の内容は、「ミサカ先輩との約束を忘れたの!」という少し大きめの声から聞き取れた。
誰だろう?
副社長に、敬語を使わず、普通に話している。
注意深く見てみた。
それは、シラカワナオだった。
シラカワナオは、副社長の机の前で、直立しているのが分かる。
他の隙間から見ると、
副社長が、いつものように、副社長の椅子に座って、
じっと、シラカワナオの顔を、机を挟んで見ていた。
「私が、秘書課には、向いていないって、知っているよね?それを知っているのに、秘書課に異動させた。どうして?」
気になるのは、シラカワさんの、言葉使いだけだ。
なぜ、敬語を使わない?
クロキ副社長は、その答えは、返さず、
「事情が変わった。上司命令だ。副社長の俺の言う事が聞けないのか?」と、淡々と言っている。
「上司部下の関係の方が優先なんだ。相談もないんだ。
いきなり当日なんだ。」と、
シラカワさんは、かなり上から目線で、言って来たように聞こえた。
副社長に対して失礼すぎるだろう。
信じられない。
「ナオさん、数ヶ月だけ、耐えて欲しい。」
そう、副社長は、お願いのように言う。
今、シラカワさんの事、ナオさんって呼んでいなかったか?
もしかしたら、親しい関係なのかもしれない。
でも、クロキ社長と、どういう接点で、親しくなれたのだろう。
食堂では、殆ど話していなかったのに。
唯一、あるとするならば、お盆の旅行中に、ミサカ先輩達に、同行したのかもしれない。
動画の噴水見つけたのは、ナオポンだと、キムラが言っていたから。
でも、失礼なヤツだ。
他人の恋の三角関係に、ちゃっかり、お邪魔するなんて。
シラカワナオに、この三角関係に、何も関係ないだろ?
私は、キムラに動画で見せてもらった、噴水のあるホテルを、
徹底的に調べた。
クロキ副社長の実家が保有する、クロキ不動産のホテルだった。
それも、どのランクの部屋に泊まったのかは、知らないが、
普通のホテルより高く、お盆中で、さらにイベントもやっているので、
さらに、料金が高くなっている。
営業事務の給料だと、
こんな、良いホテルに、なかなか泊まれる機会はないだろうから、
副社長とミサカ先輩、カズトの三角関係に、ちゃっかり、同行したのだろう。
他の3人が、ドロドロしている間、自分だけ、優雅にホテルを満喫してたのかと思うと、シラカワナオに、悪い印象しか持てなかった。
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