ーー

2/10
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
翌日、私は朝からスマホを見ないまま大学へ行く支度をした。 どうせスマホを開いたら彼とのトーク画面のままだ。きっと既読はついていないだろうし、まして返信なんてありはしないだろう。 それをわざわざ確認して、朝から落ち込むのはもううんざりだ。 「もう次の恋に行きなさい! その彼からの来るかも分からない連絡を待ってる時間が無駄すぎる。っていうかそいつ最低過ぎる! 半年も連絡ないとかありえない! 立花(りっか)はもっと自分のために時間を使いな?」 昼休みにうっかり愚痴ってしまい、友人のありすがブチ切れた。 食堂が一瞬静まり返り、私たちに視線が集まった。 私は目を三角にしているありすを宥め、周りの人たちに頭を下げた。 「あのね。時間は有限なの。学生でいられる時間なんてもっと限られてる。その貴重な時間をそんな男に捧げるのやめな?」 「でも……」 「じゃあ聞くけど、その彼のこと好き? 全然連絡くれなくても? 浮気してるかもしれなくても? むこうはもう自然消滅した気でいるかもしれないんだよ?」 ありすの質問に即答できなかった。 考えなかった訳じゃない。 むしろ昨日だってそれを考えて枕を濡らした。 「そんなやつの何がいいの? そいつと立花との出会いだとか、間柄だとか、そういうのはあたしには分かんないよ。でも、これだけは言える。あたしは立花に笑っていて欲しいの! 自分を大事にして欲しいの! 立花がその彼を好きで、その人を思ってるのが幸せで笑っていられるなら文句はない。だけど、今の立花はそうじゃないでしょ。目赤いよ」 メイクで隠したつもりだったけれど、ありすには泣いて腫れぼったくなった目に気付かれてしまった。 立花は苛立ちをぶつけるかのように、唐揚げに箸をぶっ刺した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!