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「はい。うちの近所のコンビニで見かけたことがあります。どこかで会ったようなって、思い出すまでに時間かかちゃいましたけど」  箕島ははやる気持ちを抑えて、コンビニの場所を尋ねた。それは桝野のマンションの近くのコンビニだった。 「見かけたのって一度きり?」  彼女は首を振った。「いえ、何度か。毎回化粧もしてなくて地味な格好でしたよ」  箕島が礼を言うと彼女は慌てて戻って行った。 「──マンションの近くに住んでるってことですかね」 「その可能性は高いな」 「今回のことに関係してると思いますか?」 「全く無関係ってことはねえだろ」  そう言うと滝本は魚を箸で突きながらぼんやりと何かを考え始めた。  滝本は署に戻ると告げた。まだ仕事をするつもりなのだろうか。一緒に署に向かうと言った箕島に滝本は署まで送ったらもう寝ろと言われた。 「そのひでえ顔をなんとかして来い。明日も明後日も寝られないと思え」  署に戻る前に話に出たコンビニに寄ってみたが、店長が不在で明日また改めて訪れることを告げた。  滝本を送って箕島は駅前に戻った。思ったよりも多くのビジネスホテルがあったので、今夜の宿は案外簡単に見つかった。  部屋に入るとドッと疲れが込み上げる。今日の昼までは捕まえた連続強盗犯の残務処理だけのはずだった。自首してきた犯人の取調べをまわされてきたが、問題なく供述していると聞いていた。  桝野。どうして桝野だったんだ? 箕島は上着を椅子に放り投げるとベッドに転がった。この仕事をやっていれば、取調室で知り合いと顔を合わせることだってなくはない。だが──まさか小学校からの友人と会うことになろうとは思ってもみなかった。箕島は目を閉じた。一緒に空き地を探検したり、夜中に抜け出して公園でジュースを飲んだり、学校帰りに買い食いをしたり。どうしてくだらないことばかり思い出すんだろうな。箕島は苦く笑った。  二人で熱く夢を語り合ったあの頃のことは、今日は思い出したくなかった。
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