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プロローグ
その小さな肩は桝野の腕の中で震えていた。桝野はその感覚を知っている。
またか。桝野は怒りよりも無力感を覚えずにはいられなかった。いつもいつも小さく弱いものだけに皺寄せがいく。力が強く声の大きなものが勝つような世の中なのだ。自分よりも弱いものを踏みつけても何も感じず、罪悪感の欠片すらない。そして罪にも問われない。
ならば──自分の身を挺してでも守らねばならない。あの時は出来なかったことを。
桝野はその腕に力を込めると、そっと目を閉じた。
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