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「……いいの?」
「うん!」
そこから私の掟破りの日々が始まった。
いつものように迷路みたいな森を歩き、レイが住むお屋敷にやってくる。インターホンがないから、いつもノックだ。コンコンッ、とノックをするとすぐにレイが顔をのぞかせてくれる。それから私の顔を見ると、いつも嬉しそうにパッと笑顔を見せてくれるのだ。前まではなかなか笑ってくれなかったのに、最近はよく笑ってくれる。距離が縮まっていることが明らかになっていて、とても嬉しかった。
レイの家は一人で住むにはとても広くて、いるだけで寂しくなりそうな家だった。掃除も大変そうだ。お手伝いさんを雇っている訳でもないから、レイが毎日一人で家を全部掃除しているらしい。私にはとてもじゃないけどできないから尊敬する。
レイの家ですることは日によって違った。一緒に寝ることもあれば、おままごとしたり、話したり、かくれんぼしたり、走り回ったり、折り紙したり、トランプしたり。一度だけ、キスもした。月明りに照らされながらの幻想的なキスだった。
レイの家には何でもあった。美味しいお菓子もあるし、ジュースも沢山あった。
ずっといたかった。家に戻りたくなかった。学校に行っても別に楽しくないし、そんな時間を過ごすくらいだったらずっと大好きなレイと一緒にいたかった。でもそんなことをしたらママとパパに心配されてしまうし、森に入っていることが知られたらこっぴどく怒られてしまう。
怒られるのは嫌いだ。だから時間になったら帰らないといけない。
「もう帰っちゃうの?」
レイは名残惜しそうに私の手を握った。私も名残惜しそうに「うん」と言う。
「もうそろそろで門番の人来ちゃうから、帰らないと」
「……ずっとここにいちゃダメなの?」
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