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「いたいけど、ダメなの」
「……そっか」
レイが私の手を離す。
「じゃあまた明日」
「うん、また明日」
私はレイの家を後にすると、門番が帰ってくる前に森から出て家へと走った。誰にも見つからないように物陰に隠れながら家に戻り、靴を脱ぐ。
ジャババババッと水が流れる音がして、ドアが開いた。トイレから出てきたママが玄関にいる私を見て、ギョッとする。
「ユカリ、何してるの? パジャマは?」
ハッとした。私はパジャマを着ていなかった。レイに会うためにオシャレをして、鞄まで背負っていた。とてもトイレで起きたとは言えない。
「ユカリ?」
うまい言い訳が思いつかなかった。変に思ったママはすぐに手を洗って、私の所にやってきた。
「ユカリ、何か隠してるの? どうしてそんなオシャレしてるの、こんな時間に。まだ寝てる時間でしょう?」
私が森に行っていることはすぐにバレた。こっぴどくママとパパに怒られた。町の会長さんにも、他のおじいさんおばあさんにも怒られた。私が森に通っていたことが学校にバレることは無かったけれど、それから私は森に行けなくなった。抜け出そうと思えばママとパパにいつもバレるようになってしまった。
レイにバイバイの挨拶もできずに、会えなくなってしまった。
「レイ……会いたいよぉ」
ぐすっと鼻をすすりながら、静かに泣いた。レイに会いたい。
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