47人が本棚に入れています
本棚に追加
/159ページ
復讐の始まり
夜の広がる星空が目に入る。
カーテンが揺らめき、窓が少しだけ開いていた。
「…陽暮ッ!!どうして来たんだよ!?
今すぐに逃げろ…!!」
兄は、息をするのもやっとのように見えた。
陽暮と目が合った瞬間に、太陽の表情は涙でぐしゃぐしゃになる。
そして兄の首を掴み上げ、悠々とした態度でいるのは、
「遅かったな、中々帰ってこないから退屈してたところさ。」
「ヒイロ…!!」
不敵に微笑むヒイロ。
どうして幼馴染みのヒイロがそこにいるのか。
何故兄の首を掴んでいるのか。
「ヒイロ、何をしてるの?
今すぐに太陽を離して。…じゃないと僕は、お前であろうと何をするかわからない…。」
「陽暮、何してるんだ!?
お前は逃げろ!
コイツは母さんと父さんすら殺した殺人鬼だぞ!!」
やはり、ヒイロが両親を殺したらしい。
「嫌だ!!太陽を失うくらいなら、このまま死んだ方がマシだ!」
「馬鹿かお前は!!」
太陽はいつもは冷静なのに、今は涙を見せるほど動揺していた。
「うるさいな。少し黙ってな。」
ヒイロが太陽の首を掴む手を強めた。
太陽は息が出来ないのか、バタバタと足を動かして苦しむ。
「やめろ!太陽を離せ!!」
沸き上がる憎悪が、陽暮を動かしていた。
陽暮は近くにあったホウキを手にヒイロに襲いかかる。
ヒイロは身をかわし、陽暮を蹴り上げる。
「ぁ、ぐ…!!」
魔法少年の力か。
体がすっ飛び、陽暮は勢いよく壁に叩きつけられる。
兄を助けないといけないのに頭が働かない。
陽暮をヒイロは見下ろし、満足そうに微笑んだ。
ヒイロは幼い頃から再会した今まで、こんな邪悪な表情をする奴だっただろうか?
まるで別人だ。
ヒイロはよくも悪くも純粋で、こんな顔を見せた事はなかった。
「ヒイロ………いや、お前は何者だ。」
最初のコメントを投稿しよう!