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島内の道は狭い。特に居住区は住宅がひしめき合っている上に小さな子どもが陰から急に飛び出してくることもあり車での走行には難儀する。対向車が来たら四輪ではすれ違いもできない。紙島では小型の二輪車が丁度良いのだ。住民に至っては車もバイクも持っていない者がほとんどで、専ら徒歩移動の生活をしている。外周をぐるりと一周しても大人の足なら30分もかからないこの島に乗り物は不要なのだ。
躓けば転がり落ちてしまいそうな急な坂を上る。見える住まいは集合住宅がほとんどで一軒家はあまり見かけない。建物は白っぽい灰色一色の飾りっ気のないデザインだ。歓楽街まで行けば華やかな店や人がいるのは知っていた。歓楽街のゴミを集めに行く者は映画館を覗き見したりなけなしの金を酒や風俗に費やしたり楽しんでいるようだが、ナツにはそんな余裕はなかった。娯楽以外にこの島に求めているものがあったから。
坂の上の集合住宅から海に向かって1か所ずつ集積所を回っていく。設置された収集箱を開けパンパンに膨らんだゴミ袋を荷台に移し次の集積所へ。これを繰り返す。荷台がいっぱいになったら桟橋まで戻り船にゴミを積んでからまた集積所を回る。生ゴミから出た水分と体から滲む汗が混じって服が濡れた。
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