緑のない島

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 少年は「ありがとうございます」と頭を下げてからゴミ袋の中のパンをいくつか拾い上げ臭いを嗅いでからリュックにそのまま入れた。リュックにつけられた手の平に収まるほどの大きさの六角形のアクセサリーが光った。通信端末だ。制服といい通信端末といい、この少年が紙島に常駐しているオピドスの社員の家族であることは明らかだった。食べるものに困らないはずの彼が何故腐りかけのパンを欲しがるのかナツにはわからなかった。少年はちらりとナツを見遣るとリュックから細いボトルを出してナツに差し出した。 「飲みかけだけど」 「ん」 「いやほら、パンに口の水分奪われてたから」  ナツは「どうも」と呟き生ゴミと汗の臭いが届かないように距離を置きながら腕を伸ばして受け取った。喉を鳴らして一口飲むとスポーツ飲料の味がした。「全部飲んでいいですよ」と少年が言ったのでボトルが空になるまで一気に飲んだ。口を拭いボトルを少年に返す。彼はそれをリュックにしまってからナツを見て「あのー」と言った。 「いつもこの時間にスーパー来るんですか」 「まあ、うん」 「またもらいに来てもいいですか」 「あ、えー、いいけど」
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