緑のない島

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 ナツは生まれてすぐ児童養護施設に預けられた。両親のことはきちんと聞かされていない。ナツが15歳まで過ごしていた施設は良く言えば臨機応変で悪く言えばいい加減な所だった。入所の手続きもおざなりでナツの両親が書いた連絡先の住所はデタラメだった上に今は存在しない合併前の地名が使われていた。それを許す施設をありがたがって頼る素性を知られたくない親もいるのだろう。今でもあの施設は運営を続けている。  施設の規模は小さく裕福な生活はできなかった。勉学に関して優秀でもなく進学の支援をしてくれるような親戚もいなかったナツは義務教育を終えた後は施設を出て働くと自分で決めていた。そんな折に舞い込んだ求人が紙島のゴミ収集の仕事だった。オピドスによる貧困層の就労支援。実際は誰もやりたがらない仕事を貧乏人に押し付けているだけではあったが、悪くはない話だった。  そうしてナツがオピドスの非正規雇用となったのが去年の4月のこと。今年の夏の終わりに17歳になる彼は今日も紙島で汗をかきながらゴミを回収していた。雲ひとつない青い空。風もないため汗が冷えない。学校が夏休みに入ったようで路上には子どもたちが走り回っていて、バイクの移動もかなりゆっくりになる。
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