緑のない島

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 12時を過ぎてもまだスーパーマーケットの前まで辿り着けない。集合住宅の間にある公園にはステージのようなものや提灯が取り付けられていた。眺めながら汗を拭う。前を向いた瞬間道路の真ん中に人影が見え慌ててブレーキをかけた。オピドスの家族の少年だった。相変わらずの暑そうな格好に野球チームのロゴが入ったキャップを被っている。 「よそ見危ない」 「ごめん」 「遅いから探しに来た」と言ってバイクの荷台を指差す。「乗ってみていいですか」 「いいけど」  荷台が少し揺れた。少年が腰を下ろしたのを見てからナツはブレーキを緩めた。道路を行ったり来たりする子どもたちを警戒しながら坂を下る。スーパーマーケットの裏まで来ると少年は「僕が行く」と言って荷台から下りた。ゴミ袋を持って荷台に戻り袋を開けた。 「暑いし傷んでそうだけど、食べるの」  ナツは頷いて袋からパンを出して食べた。少年は苦い顔をしてからパンを数個リュックに入れプラスチック製の使い捨てボトルを出した。 「これあげる。暑いのに飲み物ないのつらそうだし」 「ど、どうも」と呟いてナツはそれを受け取った。 「夏祭り」少年は少し左側を向いて話す。目が合わない。「明日夏祭りだから公園で準備してるんだ」 「あー」とナツは気の抜けた声を出し「そうか」とつまらない返事をした。
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