緑のない島

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「僕には関係ないけど」そっけない声色で言い肩をすくめた少年は荷台を下りた。「パンありがとう。じゃあまた」 「うん」  キャップを被り直し少年が立ち去った。ナツは少年からもらったボトルの中身を呷った。  案の定ゴミの収集が遅れた。まずは船の船長に殴られた。左目のあたりに鈍い痛みが走る。「長南にどやされるぞ」と言われた。「自分が悪かったってちゃんと言えよ」と。確かに、自分が悪い。本土に戻って事務所にいたオピドスの社員にも殴られた。鼻を啜っても溢れ出てくる液体を手の甲で拭ったら真っ赤に染まった。漏れた溜め息を聞かれさらに殴られた。口の中に血の味が広がってきた。  ナツの仕事が遅れるのはこれが初めてではない。学校が長い休みに入るとしょっちゅう起こることだ。殴って済む問題ならとっくに解決している。そんなに時間を守りたいなら島に歩道を作るなり子どもに交通安全の意識を持たせてくれと思う。そんなことは口が裂けても言えないが。社員に気付かれないようちらりと壁の時計を見る。溜め息は我慢した。この顔で会いに行くの嫌だな、と思った。
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