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第1章 ソルティな出会いクラッシュナッツ
いったいなんでこんなことに―?
寝室のドアを開けた瞬間、星宮あかりの思考回路はフリーズ。
戸口でわなわな震えて立っているしかなかった。
目の前には裸の男と女が抱き合っていた。
不意打ちだったので二人とも呆気に取られたままこちらを見ている。
レースのカーテンから太陽の日差しが漏れた真昼のベッド。
しわくちゃなシーツと脱ぎ散らかした服や下着。
許されないことが起きた後なのは間違いない。
男の方はあかりのカレシ、川嶋隼人。
まだ現実を受け止められずポカンとした顔。
「あかり、これは違うんだ…えーっと、事情があって…」
どう頑張っても隠すことは不可能な状況。
慌てふためいて服をかき集めだした姿は滑稽だった。
必死にスマホまで確認して。
「あれ? 今日って…約束、してなかった、よな?」なんて。
来ちゃ悪かった?
ホント、なんで来ちゃったんだろ?
シュークリームがうまく焼けなかったらここには来ていなかった。
外側はパリッと、内側はもっちりとしたシュー皮。
無糖のホイップクリームとコーヒー粉を混ぜたほろ苦クリームを入れて。
これなら甘いのが苦手な隼人くんだって美味しく食べてもらえる。
そう思って居ても立ってもいられなくなって来たんだよ。
いつもなら訪問前の連絡は欠かさなかったけど。
もう2年の付き合い、お互いに合鍵も持っているんだし。
たまにはサプライズもいいよね、むしろ感激されちゃうかもって。
でも、そうじゃなかった―。
「…いきなり来ちゃダメだったみたいだね」
抱えていた箱はいつの間にか床に落としていた。
シュークリームはペシャンコかな。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
今はわたしの心の方がペシャンコだ。
だって、なんでよりによってこの女なの―?
自分の運命を呪う。
その美女には見覚えがあった。
肩より長いウェーブの髪、鮮やかな赤い唇、爛々と妖しげに輝く瞳。
豊満な胸を隠そうともせず、勝ち誇ったような笑み。
冷ややかな視線にもまったく動じない。
「あらぁ、あなたが星宮あかりさん? はじめましてぇ。うちの会社の人よね? じゃあ、わたしのこと知ってる?」
まるで友達に話しかけるみたいな明るい挨拶にあかりの方がたじろいだ。
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