第1章 ソルティな出会いクラッシュナッツ

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日曜は千夏と一緒にショッピングとカラオケで思いっきりリフレッシュ。 そうして、充電を完了させて月曜を迎えた。 そういえば―。 スマホの電源がオフだと思い出したのは通勤の電車の中。 起動させると、隼人からの着信5件とメッセージが23コ。 メッセージの内容は、ごめん悪かったという謝罪の文。 それから、許してくれるよなという押しつけがましいお願いと。 あとは、俺たちこんなことで別れたりしない的な宣言。 すべて独りよがりの勝手な言い分でガッカリだった。 こんなの朝から読んじゃうなんて…。 今は別れる別れないとか考えられる状態じゃない。 しばらくは放っておくか…。 一旦仕事のことだけ考えよう。 カンセー堂製菓本社ビルの17階、商品管理部データ管理課が勤務先。 データを確認し、在庫の管理や配送先の調整を行う。 仕事は地味でも好きだ。 ひとつひとつ正確に進めることに達成感を感じる。 それに、微力ながら会社を支えているという喜びもある。 あかりは通常業務をテキパキこなすことに集中した。 「星宮さん、昨日頼んだ書類は…」 「課長、作成してこちらに印刷しましたよ」 「そうか」と、データ管理課課長の佐々木は威張った態度で受け取る。 課長は全部自分ひとりの手柄にするんだよね。 どうせこの報告書も自分でやったことにするだろう。 「星宮さん、コピー取ってくれた?」 「あ、はい、あの棚のファイルに綴じました」 「あら、そう」と、今井京子はすましている。 京子は赤いフチの眼鏡をかけた細身で年配の女性。 仕事に厳しいのかと思ったら。 自分のイヤなことを押し付けてくる面倒な人だ。 「星宮さん、あのデータできた?」 「はい、分析結果は送りましたが」 「サンキュ~。かわいいし、仕事できるし。これであと3センチスカートが短かったら言うことナシだな~」 田中司のセクハラ染みた発言にはかなり引いている。 終始ニヤニヤしていて気味が悪い。 でも一応先輩なので我慢する。 「あかりさん、ここがわからないんですけど」 「えーっと、どこ?」 新入社員の白石菜緒は何度も同じ質問をする。 菜緒ちゃん、これはそろそろ覚えてほしいんだけどなぁ。 あかりはイヤな顔をせず対応し、自分の作業に戻った。 わたしが社長になったら、み~んなクビかしらねぇ?…と、妄想する。 「あかりが次の社長になるの!」という千夏の叫びを思い出したのだ。
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