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普通なら下級兵士が王子に軽口を叩けば問題になりそうだが、田舎である我が国では王族と民との距離が近い。下級兵士であっても構わず王族に声をかけてくる。王子である俺にこんなことを言っても不敬罪に問われることはない。
特に俺は、王族といっても第三王子、それも、成人を過ぎ十六歳になっても、魔法もまともに使えない引き篭りときている。
そのため、王宮の兵士たちも全くお構いなしだ。日頃から「残念王子」だとか「引き篭り王子」と呼ばれるしまつである。
まったく、少しは俺にも兄たちと同じように敬意を示してもらいたいものだが、まあ、それも自分のせいなので、もう慣れたから今更だ。
だから、兵士の言葉に怒るでもなく、落ち込むでもなく、少しの嫌味を込めてこう返した。
「だから態々部屋から出て、こんな所まで来たのだろ。父上が『宝物庫の片付けでもしろ』ってさ」
「こんな所までって……、王宮から十歩も離れてないじゃないですか」
「俺にとって部屋の外はどこも『こんな所まで』なんだよ。第一、お前が先に『どうしたんですかこんな所まで』と言ったのではないか」
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