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第六章 でがらし聖女と辺境伯の長く熱い夜
空が茜色に染まり始めた夕刻。旦那様がカガール王国との調印式を終え、一週間ぶりに帰国した。
私は玄関先で真っ先に旦那様を出迎える。
「今帰った」
「おかえりなさいませ」
元気そうな旦那様の顔を見て、安堵やこれまでの寂しさ、旦那様への愛おしさ、いろんな感情が一気に溢れた。そうして旦那様の大きな手が頭の上にポンッとのって優しく撫でられた瞬間、私は堪えきれず広い胸の中に飛び込んでいた。
「おっと。……ただいま、セイラ。ひとりにしてすまなかったな」
旦那様はギュッと私を抱きしめて、あやすように背中や肩をさすってくれる。耳もとで囁かれる声の甘さに、キュンと胸が締め付けられる。思わず涙が出そうになった。
「いいえ。こうして旦那様が無事に帰って来てくれて、なによりです」
グリグリと旦那様の胸に頬を寄せ、その温もりと香りをたっぷりと堪能した。
やっとひと息ついたところで、ふと玄関先に立つセバスチャンや他の使用人の存在に気づく。
わわわっ！ 皆がいたんだった！
慌てて旦那様の背中に回していた腕を解く。あまりの恥ずかしさに、微笑ましそうな様子で静かに見守ってくれている皆の顔が見られない。私は顔を真っ赤にして俯いた。
頭上で笑む気配がして、旦那様が気にするなとでもいうように私の背中をポンッと叩く。
あっぷあっぷな私とは対照的な余裕の態度が、ほんのちょっぴり恨めしい。
「セイラ、留守中に変わったことはなかったか？」
「はい、こちらは変わりありません」
……そう。ただ、屋敷のどこを探しても旦那様の姿が見えず、声が聞こえなかったというだけ。だけどたったそれだけのことが、想像よりもずっと寂しかった。
自分でも驚くくらい、会えない一週間の間に旦那様を想う心が膨らんでいる。もう、隠しようなどない。
さっき旦那様の胸に抱きしめられて、離れたくないと思った。もっと深く触れ合って、彼の温もりに包まれたいと、たしかにそう望んでいたのだ。
「うん、そうか。それならよかった」
「旦那様は彼の国との対話は上手くいきましたか？」
「ああ、これ以上ないほどに。それについては後でゆっくり話そう」
ここで旦那様は一旦セバスチャンに向き直り、留守中に急ぎの案件がなかったか確認をしていた。それが済むと旦那様は自然な仕草で私の肩を抱いて、屋敷の廊下を歩きだす。
旦那様もまた、以前より私に触れることに遠慮が無くなっているように感じた。そのことが少し照れくさくも嬉しかった。
「セイラは夕食は？」
「まだです」
もちろん食べずに待っていましたとも。
ひとりで取る食事はやはり味気なくていけない。一週間ぶりに旦那様と同じ食卓に着くのを心待ちにしていたのだ。
「では、一緒に食べよう。先に食堂に行っていてくれるかい？ 旅の汗と埃を流したら、俺もすぐ向かうから」
「はい！」
浴室に向かう旦那様の背中を見送って、私は軽い足取りで食堂に向かった。
そうして洗い髪が完全に乾ききらないうちにやって来た旦那様と共に、久しぶりに笑顔と会話の絶えない夕食を堪能したのだった。
その日の夜。
湯あみを済ませ、後はもう眠るだけのそんな時刻。私はドキドキと騒ぐ胸を押さえながら寝台に座っていた。
視線を扉へチラチラと向けてしまうのは不可抗力だ。だって、旦那様の寝室と繋がっているその扉がいつ開かれるかと気が気でないのだから。
実は夕食の後、部屋まで送ってくれた旦那様が去り際に『もし今夜、俺が君の寝室に行くことを許してくれるのなら、続き間の扉の鍵を開けて待っていてくれ』と低く囁いた。
けっして強制するような響きはなく、私の判断に委ねると、まだ尚早と思えばそれはそれでいいのだと、そんな旦那様の言外の声が聞こえてきそうだった。旦那様は本当に優しい人だ。私を尊重し、どこまでも大切にしてくれる。
羞恥はあれど迷いはなかった。彼に応えたいと、素直にそう思った……わけなんだけど！
ひぇえっ、恥ずかしいよ～。そもそも、こういう時ってどんな顔をして出迎えればいいの!?
いざその時が近づいてくると冷静でなんていられない。私は今世こそ箱入りの聖女様だけれど、前世では興味本位でそういう漫画や小説に手を伸ばしてみたこともある。ありていに言えば、立派な耳年増。だけど、実体験はまったく伴ってないないのだ。そりゃあ、緊張もするし、怯みも──。
「セイラ」
「うひゃあっ!?」
ポンッと肩を叩かれて、飛び跳ねる勢いで振り返る。
いつの間にか旦那様がすぐ横に立っていて、肩から引いた手を宙にさ迷わせながら戸惑った様子で私を見下ろしていた。
「だ、旦那様っ！」
ひぃいっ、よりにもよって『うひゃあっ!?』って！ どうして『きゃっ』とか、もっと可愛く叫べなかったのか……ぅぅっ、居た堪れない。
「すまん。一応ノックをしたんだが。……驚かせてしまったようだな」
「いえ、こちらこそすみません。ちょっと考えごとに集中しすぎてしまったみたいで」
私の答えに、旦那様は瞳を翳らせた。眉尻も僅かに下がっている。……ん？ なんでだろう。
「悪かった。急かす気はなかったんだが、俺のせいで悩ませてしまったようだな。今夜はもう──」
「それは違います！」
旦那様は誤解している。すぐにでも自室に帰っていってしまいそうな彼を引き止めようと、私は言葉の途中を遮るように声をあげた。
そのまま勢い込んで、さらに言葉を続ける。
「鍵を開けて待っていたのは、私がそうしたかったからです。もっと仲良くなりたい、もっと繋がりを深めたいと望んでいるのは、旦那様だけじゃありません。だから行ってしまっては嫌です！」
旦那様は目を瞠り、次いで私の視線から遮るように大きな手で目もとを覆う。指の隙間から覗く目もとや頬が、赤くなっているように見えるのは気のせいか。
「あの、旦那様？」
黙り込んでしまった旦那様を訝んで呼びかけた。
「君はどこまで俺を有頂天にさせれば気が済むんだ。頼むからこれ以上、俺に醜態を晒させないでくれ」
「醜態？ なんのことですか？ 旦那様はいつだって完璧で、素敵すぎて困ります。私としてはむしろ、そういう面があるなら見せてほしいくらいですよ」
私がコテンと首を傾げていると、旦那様が目もとにあてていた手を離し、ジトリとした視線を寄越す。……ん？
「まったくこっちの気も知らないで。そんな安易なことを言って、後悔したって知らないぞ」
苦しげな旦那様の呟きを耳にした。直後──。
「えっ？」
旦那様が一歩分の距離を詰め、上からすっぽりと覆いかぶさる。旦那様の胸の中に閉じ込められて、大好きな香りと温もりに包まれる。
「夕食の席からずっと、こうして君を抱きしめたいと思ってた。呆れたか？」
熱い囁きが耳朶を掠め、カァッと頬に朱が上る。煩いくらいに胸が鳴って、呼吸が苦しいほどだ。
「……いいえ。それを言うなら私だってあなたを出迎えた時、セバスチャンたちの目があることに気づいて慌てて腕を解いたけれど、本当は離れたくなかった。もっとあなたの胸の中にいたいと、そう思っていましたから」
旦那様が息をのむ。
ふたりの間に隙間ができたと思ったら、旦那様の大きな手が顎にかかる。クイッと上向かされて、唇をしっとりと塞がれた。
「んっ」
角度を変えながら、段々と口付けが深くなる。息が苦しくなって唇を開くと、旦那様の舌が入り込む。
口内をピチャリと舐められて、その艶めかしい感触にぞくりとした。おずおずと舌を差し出すと、絡めるように扱かれる。
恥ずかしいのに、気持ちいい。これまでに幾度か経験した表層を触れ合わせるだけのキスとは違う深い口付けに翻弄される。
私は旦那様の背中に腕を回し、必死になって応えた。
どちらのものとも知れぬ唾液が口の端を伝い、旦那様が舌先でそれを追う。
「あ……っ」
旦那様の唇が、喉もとから鎖骨、胸もとへと下りていく。人に触られたことのない敏感な部分を舐められ、時に吸われ、体の内側に馴染みのない熱が生まれる。
ネグリジェの大きめに開いた襟ぐりから覗く胸の谷間に口付けながら、旦那様がトンッと私の肩を押す。
「きゃっ？」
寝台の端に座っていた私は、そのまま仰向けにぽふんと敷布に沈む。旦那様は私の足先に引っかかっていたスリッパを手早く脱がせ、自身も寝台に乗り上がった。
私の体の位置を寝台の中央にずらすと、旦那様は体重をかけないように顔の横に腕を突いてから覆い被さる。まるで旦那様の腕の檻にすっぽりと捕らわれてしまったみたい。
旦那様の瞳がいつもの優しくて甘いだけではない別の色を宿している。自分が捕食者に狙われる小動物にでもなってしまったように感じた。
「……セイラ」
真っ直ぐに私を見下ろすグリーンの双眸が情欲をたたえてけぶる。彼にそんな目をさせているのが自分なのだと思うと、不可思議な高揚を覚えた。
「旦那様……」
私は自分から捕食者の胸に飛び込んだ。縋るように両手を彼の逞しい肩に回すと、すぐに口付けが降ってくる。
前合わせになっているネグリジェの腰のリボンがシュルリと解かれ、日焼けを知らない真っ白な肌が徐々に晒されていく。恥ずかしさに身を捩ろうとするけれど、旦那様は許してくれない。興奮と羞恥が高まる。
ついにネグリジェが肩から落とされて、柔らかなふたつの膨らみが露わになる。旦那様が息をのむのを感じた。
「綺麗だ」
大きな手がそっと膨らみを包み込み、柔らかな感触を味わうように揉まれる。長い指が時々胸の先端を掠め、その度に私はピクンピクンと小さく体を震わせた。
旦那様が顔の位置を下げ、ツンと尖って主張する胸の頂にそっと唇で啄んだ。
「ぁあっ」
走り抜けた甘美な刺激に体をくねらせる。無意識に旦那様に体を押し付けるような格好になった。
旦那様は朱色に色づいた尖りをチュッと吸い上げたり、舌で舐ったりしながら、もう片方の膨らみを下から掬うようにして優しく捏ねた。
絶え間なく与えられるジンジンと痺れるような刺激に、私は息も絶え絶えになった。一方で、胸への愛撫は気持ちいいのに、どこかもどかしい焦燥も生む。
助けを求めるように、旦那様に薄く涙の滲んだ目を向けた。
「……これは困ったな」
熱っぽい目をした旦那様がこぼす。
「旦那様？」
「君は可愛すぎていけない。……油断すると理性もなにもかも持っていかれてしまいそうになる」
「それだとなにかいけませんか？」
私が息を弾ませながら途切れ途切れに問うと、旦那様は私の視線から逃げるように目線を下げホゥっとひとつ息をつく。
「頼むからこれ以上俺を煽らないでくれ」
小さく首を傾げる私に苦笑して、旦那様はやわやわ揉んでいた膨らみの先端をキュッと強めに摘まんだ。
「ぁあっ!?」
痛みと紙一重の刺激に、ビクンと体を撓らせた。
旦那様は私の反応をつぶさに見つめながら、身の内に溜まる激情を抑えるように低く告げる。
「君にひどくしたくないんだ」
旦那様は摘まんで虐めた蕾をそっと唇に含み、宥めるように舌先で優しく転がす。
……旦那様になら、ひどくされてもいいのに。
喉もとまで出かかった言葉をのみ込んだ。それに旦那様はああ言うけれど、私には彼が私を傷つけるような真似は絶対にしないという確信もあった。
だけど、まともな思考は次の旦那様の行動で霧散した。
「あっ！」
旦那様の手が胸から肋骨を辿り、脇腹へとなぞっていく。そうしてウエストまでたどり着いた手が、腰のあたりに撓んでいたネグリジェを引き下ろす。
さらに旦那様は腰で結んでいるショーツの紐を、容赦なく引いてしまう。結びが解かれたショーツはハラリと布切れになって落ち、淡い下生えに覆われたあわいが旦那様の目に容赦なく晒される。
あまりにも恥ずかしくて、反射的に隠そうとして手を伸ばす。だけどそれよりも一瞬早く、旦那様が体の位置を下げ、下肢の間に顔を埋めてしまう。
「やっ!?」
太腿を抱えられて、露わになった秘所に口付けられる。
旦那様は逃げそうになる私の腰を抱え、唇で固く閉ざされた秘裂に丁寧に舌を這わせた。尖らせた舌先で花芯をつつかれると、いまだかつて経験したことのない甘美な痺れが走った。
「あ……、だめっ！」
花芯を唇で吸われ舌で捏ねるようにされるのは、いっそ暴力的なほどの快感だった。腰が勝手に跳ね、綻んだ秘唇から愛液がトロリとこぼれた。
旦那様は敏感な淫芽に舌での愛撫を続けたまま、愛液をたっぷりたたえた膣口にそっと指先を沈み込ませる。たっぷり潤んだ膣内は抵抗なく節くれだった指を根本までのみ込んだ。
「ん、……んんっ」
けれど二本目の指を第二関節くらいまで挿れられたら、引きつるような感覚があった。体が強張り、緊張に息をのんだ。
「大丈夫、無理にはしない。君は気持ちよくなることだけ考えていたらいい」
旦那様は強引に押し入れようとはせず、花芯や膣口の周りを丹念に舐め、私の意識をそちらに集中させる。私はあっという間に快感の渦にのまれてしまいそうになる。
「なに？ ……やだ、なにかきちゃう。怖いっ」
違和感はとうに快感で塗り替えられている。むしろ、今となってはこれ以上気持ちよくなるのが怖かった。
「大丈夫だ、なにも怖くない。快感に集中してそのままイッてごらん」
淫芽を舌で強めに扱かれて、私は高みに押し上げられた。
「いっ、ぁああっっ！」
真っ白に快感が弾け、甘い余韻を残して体がふわりと弛緩する。
隘路は新たな蜜をトロトロとこぼして綻び、二本目の指が根本まで挿ってきてもまったく抵抗はなかった。二本の指は出し入れを繰り返しながら、膣壁を押したり揃えた指を中で広げたりして隘路を解していく。
そんなふうに解されている内に、絶頂には至らないが膣内でも少しの気持ちよさを感じるようになった。
「すまんが、そろそろ限界だ」
旦那様の呟きの後、隘路からズルリと指が引き抜かれる。惜しむように膣壁が戦慄いた。
「……あっ」
視線を向けると、口もとを拭いながら半身を起こす旦那様と目が合った。色欲に濡れた瞳が、体の芯に熱を灯す。下腹が重く疼き、ジュンッと愛液が滲んだ。
旦那様は乱暴に夜着を脱ぎ捨てて、素早く私に覆い被さった。厚い筋肉に覆われた彫刻のような裸体にときめくが、ほんの一瞬旦那様の男性自身が目に入ってしまいギョッとする。
……え、うそ。あんなに大きいの!? 反り勃つ怒張は私の手首ほどもあろうかという太さで、血管が浮き出た凶悪なフォルムをしていた。規格外のそのサイズに果たして無事に受け入れられるのかと怯えが浮かぶ。
旦那様はすっかり固まってしまった私に苦笑してそっと顔を近づけると、額や頬、目もとから鼻先に、私の顔中に優しいキスの雨を降らせた。
「絶対に無理なことはしないよ。ゆっくりする」
少し困ったように告げられて、私は覚悟を決めてコクンと首を縦に振る。
なんとなく旦那様はこうなるのが分かっていて、私に見せないように脱ぐタイミングなどを計っていたんだろうなと思った。その不器用な優しさが愛おしい。……見ちゃったけど。
「手を繋いでいてくれますか？」
「もちろんだ」
旦那様は蕩けるように微笑み、指を絡めてグッと私の手を握ってくれた。
「あ、ああ……っ」
たっぷりの愛液で潤んだ秘所に怒張の先端があてがわれ、ゆっくりと腰が押し進められる。じっくり解されたおかげか、亀頭の丸みは抵抗なく泥濘にのみ込まれた。
旦那様は私の反応を見ながら慎重に剛直を進めていく。指とは比べ物にならない大きさのものをのみ込まされ圧迫感がひどいが、予想より痛みは少ない。
安堵しかけたけれど、中ほどまで挿ったあたりから痛みが増してきて目に薄っすらと涙が滲んだ。旦那様は腰を止め、眦に溜まった涙を唇で拾ってくれる。
「旦那様、キスしてください」
心配そうに覗き込む旦那様に、私はキスを強請った。旦那様は何度も角度を変えながら優しく唇同士を重ね、頬や目もとにも触れるだけのキスをたくさんしてくれた。
「もう大丈夫です。最後までしてください」
「だが、まだ痛むだろう？」
「平気です。旦那様とちゃんと一つになりたい。ここで終わられちゃったりしたら、それこそ泣いちゃいますよ」
「……まいった。俺は君に、一生勝てる気がしない」
次の瞬間、絡めた指にグッと力が籠もり──。
「セイラ、愛してる」
熱い告白と同時に腰が押しつけられて、ふたりの下肢が隙間なく合わさる。
「いっっ、ぁああ!!」
私は激痛を旦那様の手を握りしめて堪える。旦那様は啄むようなキスをいっぱい降らせながら、しばらくの間ジッと動かずにいてくれた。
「セイラ、こっちだけ手を解くぞ」
痛みの波が少し引いてきたところで、旦那様が繋いでいた右手だけ解き、腰のあたりをさすりだす。
私よりも体温の高い大きな手で宥めるように撫でられると、すごく安心できる。不思議なことに、痛みの残滓までが散っていく。
何度か手を往復されている内に、痛みはほとんど気にならなくなっていた。
「んん……っ」
痛みが消えて不要な力みが取れると、中にいる旦那様の存在をひどく意識してしまう。無意識の痴態で隘路が戦慄き、剛直に絡みつく。
「……ッ、もう痛みは大丈夫なようだな。動くぞ」
私の反応を見つつ、旦那様がゆっくりと腰を使いだす。奥を強く突いたり、激しい抜き差しをしたりはせず、私を最優先にした穏やかな動きだった。
中で快感を拾うことはまだ難しいけれど、捏ねるように腰を押し付けられると陰核が刺激されてビリビリする。
「そうか。こっちの方がいいか」
それに気づいた旦那様が、腰を抱いていた手を下腹に伸ばす。
「やぁあっ！」
旦那様の指が下生えを割って淫芽を弾くと、大仰なくらい体が跳ねた。
「それ、ダメ……っ、ダメだからぁっ！」
ゆったりと抽送をしながら指の腹で快感の芽を捏ねられるのは、信じられないくらい刺激が強い。痛みとは別の涙を浮かべながら、与えられる愉悦に翻弄される。
旦那様は私に苦痛の色が無いのを見て、抽送を少し速くした。そうしてグリンと淫芽が押し潰されて怒張が膣奥を抉った瞬間、キュウッと隘路が蠕動した。
「っ！ セイラ、そんなに締められたら持たない」
苦しげな旦那様の声は聞こえているけれど、そんなのは私の意思でどうこうできるものじゃない。むしろ膣壁はますます伸縮し、剛直をキツく絞るような動きをみせた。
「そんなの分かんない……けど、これ気持ちいい……あっ、ぁあああっ！」
やがて膨らみきった快感が弾け、私は二度目の絶頂へと駆け上る。
「クッ！」
旦那様が低く唸り、胎の奥に熱い奔流を迸らせる。
じんわりと熱が広がり、なかなか高みから下りてこられない。旦那様もまた何度も腰を震わせながら、長い絶頂を味わっていた。
どちらからともなく唇を寄せ、深い口付けを交わした。
「セイラ」
「旦那様」
私たちはいつまでも固く抱き合ったまま、共に上った快感の余韻を揺蕩う。こうして心も体も旦那様の愛に満たされて、夫婦で過ごす初めての夜は更けていった。
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