記念日

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記念日

水族館は海に面しているわけで。 海面が太陽の陽射しできらきら輝いている光景が目に入った途端、彼女は嬉しそうな声を上げた。 「補佐!海ですね!」 それまでとは打って変わったその笑顔を見て、俺はほっとした。 ずっとぎこちないままで、一日を過ごすことにはならなさそうで良かった。俺と一緒にいるのが楽しいと思ってほしい。 とは言え、デートコースとして水族館を選んだのは、ちょっとベタすぎただろうか――。 そんな後悔がちらと頭に浮かんだが、彼女のキラキラした目を見たら、そんな思いはすぐに消え失せた。 「私、ここに来たのは初めてなんです」 車の中ではかちこちに固まっていたのが嘘のように、彼女はワクワクした様子を見せている。 可愛い――。 俺は緩みそうになる口元にぐっと力を入れて、表情が崩れるのを回避した。 「俺は水族館に来たこと自体が初めてなんだ」 「えっ、そうなんですか。それじゃあ、今日は水族館記念日ですね」 「なるほど」 君との初デート記念日でもあるね――。 口に出すのは恥ずかしいようなセリフが、ふと頭の中に浮かぶ。今日の俺は少し舞い上がっているようだ。 受付を済ませて中に入ると、早速巨大水槽が目の前に現れた。 様々な種類の魚たちが泳いでいる。よく見ると、海を再現するような構造にでもなっているのか、水面がゆったりと波打っていた。 彼女は目を輝かせて、水槽の中を見つめている。 「癒やされますね」 それを聞いて、俺はまた心の中だけでつぶやく。 俺は君に癒されているよ――。
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