始まりの日

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 そしてある日のこと、女が美しい着物を持って納戸に入ってきた。 「お前これに着替えな。出来たらすぐに出立するよ」 (いよいよなのね)  とうとうオークションの日が来たらしい。 私は女に言われるがままに美しく華やかな着物を着て女に連れられて馬車に乗った。 「数日でまた見違えたね。どんな値がつくか楽しみだよ」  女はウキウキしながら私を頭の先から足先まで舐め回すように見てから満足そうに笑った。  しばらく走った馬車が止まると私は顔まで隠れるフード付きの外套を被せられ、女に手を引かれてとある建物に入って行った。 「商品だよ」  女がそう言うと地下へと続く階段に導かれ、私達は地下に向かって歩いて行った。  ついた先では座敷牢があり、その中には多数の女や子供が押し込められていた。 「じゃあここでさよならだね。せいぜいいい値で売れるんだよ」  外套を剥ぎ取られると座敷牢に放り込まれる。  私はしばし周りの人達を眺めると、皆絶望して暗い顔をしていた。
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