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「お仕事中に無理言って申し訳ございません。私は大路秀美と申しまして出版社で編集をしています。隣のこちらは、鬼龍院剛毅先生、本名は平等汎人さんです」
「ええ、私が有名な、超売れっ子のミステリー作家の鬼龍院剛毅こと、平等汎人です」
「鬼龍院剛毅?」
駐在さんだけでなく、警部補も声を上げて首をかしげた。
「ミステリー小説はよく読むのですが、鬼龍院剛毅というお名前は、存じ上げませんでした」
「私もです」
そういう二人の地方公務員に、秀美は「ずいぶん前から私が必死に売り出しているミステリー作家でらっしゃいます」と「必死に」の部分の語気を強めにして返した。
(続く)
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