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液晶越しのあなたの笑顔
四角い画面をタップすると、今日もあなたがそこにいた。
元気で明るいあなたの声が、姿が映される。
その姿を見ただけで、心が少し安心するのを感じた。
あなたは楽しく話すだけで、わたしはただ、その話を聞くだけ。
それだけの関係なのに、それが一番心地がいい。
そう、思っていた。
あなたは、どんどん有名になって、毎日毎日姿を見せるようになっていった。
たまに、わたしの知らない人とコラボをするようになった。わたしはあなたしか知らないので、こういう人もいるんだなと、勉強になった。
なにより、あなたが楽しそうだったので、わたしはそれが嬉しかった。
今日もタップすると、あなたが来てくれる。
わたしは、なんだか不安に駆られるようになっていた。
まるで、取り憑かれたように、毎日毎日元気いっぱいに振る舞うあなたは、どうやら、ファンと数字とやらに囚われているようで。
すこし、休んだ方がいいのではないかと、勝手に不安になってしまった。
こういった仕事は、へんしゅう?にも、時間がかかり、体への負担も大きいと聞いた。
元気なのが取り柄だから!と笑う、あなた。
あなたが幸せならば、それでいいか。
わたしもあなたに毎日会えて、嬉しいのは本当の気持ちだった。
「大事なお知らせ」
白地の背景に、黒字の文字。
どくん、と変な音がなった。
まさか。
実生活が忙しくなったので、しばらく投稿を控える。ファンのみんなには申し訳ない。
といった、あなたにしては短いメッセージが込められていた。
すぅと、息を吸う。
これでいいんだ、と思った。
少し寂しいけれど、これで元気になってくれればそれでいい。
前のあなたに戻りますように。
あれから何度タップしても、あなたは出てこない。何日も何日も出てこない。
それくらい疲れていたのだろうか。
辛かったのだろうか。
元気なあなたは画面の中だけ。
あなたがかえってこない。
かえってこない。
どんどん数字も減っている。
もう帰ってこないのかもしれない。
それだけの関係なのだから、仕方ない。
なんて思えない。わたしがいくらかけたと思ってるの。時間をかけたと思ってるの。
許せない。
許せないから。
「会いに来ました」
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