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「そうや。鞍馬山には天狗はんが住んでいてな、時々人間の子供と遊びたがるんや」
「ぼく、天狗さんと遊んだの覚えてないよ」
「天狗はんの世界は人間の住む世界とはちゃうからな、戻って来ると忘れてしまうんや……」
「そうなの?天狗さんまたぼくのとこに来るかな……」
「勝也はじいちゃんが守るから大丈夫や。心配せんでええ、もうなんも怖いことないから……」
そう言う祖父は少し悲しそうだった。おじいちゃんはぼくのためにウソついてる、と7才の勝也はそう思った。
それから三年が経ち、勝也は小学五年生になっていた。家族との関係は良好だったが相変わらず友達と外で遊ぶよりは家で本を読んだり、パソコンをいじったりするのが好きな子供だった。勝也はハイレベルで有名な大学附属の小学校に通っていたが、成績は常に学年1位。学校独自開催の5、6年生の合同学力テストでも6年生を差し置いて、勝也がトップを取った。勝也はクラスでは大人しくて目立たない存在だったが、学校内では目立っているという不思議な立ち位置の生徒だった。
それは夕食を終え、家族揃ってリビングで寛いでいる時の事だった。父と母は海外のドキュメンタリー番組を見ていた。兄と姉はスマホに夢中で、勝也はソファーの隅に座り学校の図書室で借りた本を読んでいた。
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