常務秘書、野々村の秘密

15/45
前へ
/45ページ
次へ
 80才の今日まで毎朝夕のお勤めは欠かしたことはなく、質素な食事と規則正しい生活を送り、病気知らずの人だった。勝也の父が、あの人は間違いなく100才まで生きる、と言っていた矢先、祖父が倒れたとの連絡が入ったのだった。  鞍馬の設楽さんとこに花見に行ってくるわ、と言って午前中出かけた祖父は夕方になっても戻らず、心配した叔父が設楽氏に連絡を取った。 「一緒に昼を食べて、十四時くらいに出られましたわ」 「その後どこかに寄ると言っていませんでしたか?」 「いいや、ああ、でもしきりに勝也くんの心配をしとったな。もしかして……」 「何か心あたりが?」 「山を越えて貴船に向かったのかもしれん」 「え?さすがに父でももうあの山はきついと思いますが……」 「……勝也くんや」 「勝也?どういう意味です?」 「勝也くんの事をお願いしに行かれたんや」 「貴船神社にですか?」 「いや、お山の主はんにや」 「どういう……」 「とにかく、うちの者を山の中へ見に行かせるわ、あんたは警察に連絡して野々村はん探してもろて」 「わかりました」
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加