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「……かつやは賢くて強い子や、何があっても切り抜けられるとじいちゃんは信じとる……」
祖父が何を言おうとしているか、よく分からなかったが勝也は祖父の手を握ったまま何度も何度もうなずいた。
「……みんな、なかよくな」
その言葉を最後に野々村宗玄は家族に見守られ静かに旅立っていった。
祖父の葬儀の準備に追われるなか、勝也は一人、庭に立っていた。祖父との思い出がたくさんの庭。日当たりのいい一角には二本ならんだ満開の桜の木、兄と姉、勝也が生まれた時に記念にといって祖父が植えてくれたものだ。
……じいちゃん、本当に逝っちゃったんだね。
悲しい、というよりは心の中に大きな穴が空いたようなこの感覚、喪失感、というのだろうか。
ふと、視線を感じてそちらに目を向ける。古い蔵のわきの植え込みの前に子供が立っていた。黒い着物のような、洋服のような変わった服を着た10才くらいの男の子が勝也をじっと見ている。
……誰だろう、親戚の子かな?会ったことない子だけど。
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