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まだ祖父の影響が残っているのか、近付いてはこないのだが、それがなくなった時の事を考えると恐ろしい。祖父の力があとどのくらいの期間勝也を護ってくれるのか分からなかったが遅かれ早かれそれは消えてしまい、自分はヒタキの住む世界に連れて行かれてしまうのかもしれない。その方が勝也も幸せだと、ヒタキは言った。
……でも、それは、嫌だな。
確かに自分は幼い頃から常に疎外感を感じ、場に馴染めず居心地の悪い思いもすることも多いけれど、それでも大好きな家族がいる。何より命をかけて守ってくれた祖父の事を思うと、この世界に留まるべきだと思う。祖父の護りの効力がいつ切れるのかは分からない、明日かもしれないし、一年後かもしれない……。
どうしたらいい?
そうだ、日本から出てしまうというのはどうだろう。ヒタキは海外まで自分を追って来るのだろうか?仮に時間と空間を超える能力があるとするならそれも可能かもしれないが……。悩んでも時間のムダだ。先ずは思いついた事を片端からやってみよう、この世界に留まるために。
それからわずか半月後、野々村勝也はイギリスに住む姉の元に向かい、その後アメリカに移動し大学に入学、卒業するまで一度も日本には戻らなかった。
そして、現地でヒタキの姿を見かけることもなかった。
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