会いたい人

朝のこと

　土曜日の朝起きると、彼はすでにいなかった。
　昨夜も機嫌が悪かったけれど、休みの私を気遣って静かに仕事に行ったんだろう。

　食パンに切れ込みを入れて、バターをつける。
「こうすると、切ったところに溶けたバターが染み込んでうまくなるんだって」と教えてくれたのはいつのことだっただろう。もうすっかり私の生活の一部になった。

「本当だ、おいしいね」と一緒にトーストを食べた朝もあったのに。
　トーストをサクッとかじる。テレビをつけるけれど、内容が頭に入ってこなくてすぐ消した。静かになるとより「ひとり」だと感じられた。

　鏡台の前で、化粧を始める。
　手がすべって、置いてあった招待状を床に落としてしまった。拾い上げて、中身を確認する。会場のアクセス図で、路線を再確認する。

　今日は同窓会だ。
　夕方一度帰宅して着替えて、美容院で髪をセットして、ホテルには18時までにはついておきたい。私は買い物に出た。