友達

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「野田さん、大丈夫? なんもされなかった?」 「うん」 「よかった……最初、ぶつかったところから野田さん狙ってたみたいだったからさ」  人がだいぶはけてきた。私達は待合室のソファに腰かける。 「なんていうか、びっくりしたよ。佐藤君があんなに変わるなんて」  同窓会はキラキラしていて、青春時代からそのまま皆が大人になっただけのように見えていたけれど。 「変化って、いいことばっかりじゃないね」  目新しく見えるものが、すべて良いものとは限らない。  佐藤君のことは残念で、なんだか宝物を失ったような気持ちで。でも昔の私達はこんな日が来るなんて思っていなかっただろう。 (今日の佐藤君は別人だ。思い出は綺麗なまま、心の中に残しておこう)と、そう思った。 「……ぶっちゃけ私の変化も、びっくりしたでしょ」  上野さんが隣でうつむいている。 「あっ、そういう意味で言ったんじゃないよ! 変わったのは驚いたけど、でもその服もメイクも上野さんが好きでやってるんでしょ」 「……うん」 「誰にも迷惑かけてないし、いいじゃない」  彼女は顔をあげた。目に涙がにじんでいる。 「ありがとう……実は私ね、高校の時から野田さんと友達になりたかったの」 「そうなの?」 「高校3年生で同じクラスになった時、バッグから私の好きな小説がのぞいてて、話しかけてみたいなって思ってたけど、野田さん友達多いし、陽キャで私と住む世界が違うというか……」 「私、そんなに大した人間じゃないよ」 「ううん。今日も皆と話してる野田さん、輝いてた。  『絶対声をかけよう』って思ってたの。まさか佐藤君の話をすると思っていなかったけど、そんな気持ちになるなんて、今日、勇気を出して話しかけてよかった。 ……あ、ちなみにこの後って時間ある? なんだか話し足りないな」  上野さんは目を輝かせながら言って、直後「これじゃさっきの佐藤君のナンパと同じみたい」と笑った。私もつられて笑った。 「ごめん、上野さん。また今度でいいかな。今日は家で待ってる人がいるから。  帰りたくなってきちゃった」 「そっか……もしかして彼氏さん?」 「そう。またLINEするね」 「うん」  そうして、私達は手を振って分かれた。  タクシーを拾い、電車に乗りかえ、私は向かう。  靴下を脱ぎ捨てるし、同窓会ってだけですねてしまう、愛しいあの人の元へ。
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