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真新しい輝き
「僕は行ってほしくないな、浩子さん。
同窓会で昔付き合ってた人とよりを戻す、ってよく聞くし」
雑貨屋でイヤリングを見ていると、不意に彼の言葉がよみがえった。
あれは先月、招待状が届いて、「この日は高校の同窓会行ってくるね」と話した夜のこと。
夕食後、彼があったかいココアをいれてくれて、二人で飲みながらテレビの音楽番組を見ていた時だった。平和な時間だったのに。
彼はわざわざ音量を下げて、私の顔を見てそう言ったのだ。
「そんなんじゃないったら。昔付き合ってた人もいないし。
友達や先生に会うだけよ」
彼――丈一郎さんはため息をもらし、ソファから立ち上がった。「僕は行ってほしくないんだけどなぁ」とぶつぶつ言う。
私はむっとした。
いいじゃない、同窓会くらい。
私達はめったにケンカをしない。というか、ならない。十二歳上の彼は、落ち着いて真面目で、私のすることをにこにこと見守って、失敗も許してくれる。
例えば私が彼のお気に入りのシャツを間違って洗濯して、まだらに色が入ってしまった時も。料理の味付けを失敗した時も。「君といると飽きないなぁ」なんて笑う。穏やかであまり変化のない毎日。
だからこそ、あんなふうに反対されると面白くない。私は信用されていないんだと思う。
昨夜も同じ内容で喧嘩した。「絶対行くから!」と大きな声で言った私に、彼は悲しそうな顔を見せた。
懐かしい顔ぶれと懐かしい話をするだけなのに。なんで私が罪悪感を感じないといけないんだろう。
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