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靴下
ソファの影に、彼の脱いだ靴下を見つけた。
(毎回洗濯機に入れてって言ってるのに)と苛立ちを感じつつ、洗濯機に入れる。しっかりしているようで、彼も抜けているし子供っぽいところもある。
冷蔵庫から牛乳を取り出す。扉を閉める直前、半分使ってラップしたままの玉ねぎが目に入った。
「あー、食材も買い出しておけばよかった」
思わずひとり言が出る。野菜室ものぞいた。
人参、キャベツ、しめじ、じゃがいも……どれもこれも半分とか、残り1本とか、キャベツなんて4分の1で、メインには到底なりえない量だ。仕事のお付き合いで留守にする時はいつも、丈一郎さんの晩ごはんを作るのに、同窓会で浮かれてうっかり忘れていた。
浮かれる。そう、楽しいはず、楽しくていいはずなのだ。同窓会の準備を進めるたび、反対する丈一郎さんの顔が浮かぶ。
やっぱり面白くない。
(いっそのこと、同窓会で良い人がいたら乗り換えちゃおうかしら)なんて、意地悪い考えが一瞬、頭を通り過ぎる。
時計を見上げるけど買い物に出る時間はもうない。「ごめんね」とLINEを送ろうとしてやめる。彼は晩ごはんくらい自分でどうにかできる人だ。
牛乳を温めて飲み、一息つくと私は着替えた。
紺色の落ち着いたワンピースは5年前に買ったもの。
イヤリングは今日購入したもの。
合わせてみると、イヤリングの輝きに、ワンピースのシンプルなデザインが負けていて、少し残念だった。ワンピースも買い替えたらよかったかもしれない、と思いながらコートを羽織る。
私は再び外に出た。外の冷たい、でも新鮮な空気が私の頬に触れる。
さぁ、同窓会だ。
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