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私はどう見えているのだろう。高校の時、私の交友関係は広かった。吹奏楽部の活動が有名な私立校で、部員は100名弱にもなり、どのクラスにも部員がいた。副部長をしていた私は当時、「明るくて社交的、元気が良い女の子」で通っていた。
今の私は、丈一郎さんの影響もあって落ち着いた大人になってると思うけど、皆と話をしているうち、だんだん昔の性格が内側から引っ張り出されてくるような、不思議な感覚になっていた。皆から声をかけられて、気分が高揚しているのがわかる。
丈一郎さんが危惧した通り、同窓会にはそんな気にさせる何かがあるんだろうか。
会場に戻った時、どん、と肩にぶつかってきた人がいた。
「あっ」
少しよろめく。「危ない!」ととっさに腕をつかまれて、私は転ばずに済んだ。
「ごめんごめん、大丈夫?」
振り返って名札を見て、私は固まった。
「……佐藤くん?」
「野田?」
一瞬の間が空いて、「えー!」と思いっきり指を差してしまった。
「うっそ、だって坊主頭だったじゃない!?」
「あれ、野球部だったからだよ。さすがに30近いのに坊主もないだろ」
「そっか、そうだよね」
佐藤君は――一言でいえば、かっこよくなっていた。偶然3年間同じクラスで、話しやすかった佐藤君。ユニフォームを泥だらけにしながら頑張っていた彼は、背が伸びてグレーのスーツ姿で、髪型が今流行りのアイドル俳優みたいになっていた。茶髪でやや長めのセンター分けにして、毛先をあちこち遊ばせている。
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