再会、そして青春の思い出

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 ようやく席に戻ると、話に夢中になってる間にコース料理がたまっていた。 「えー、どれもおいしそうー」  スープに、鯛のムニエル、和牛サーロインのグリル、2種類のパン。  こんな食事は久しぶりだ。丈一郎さんが好きだから我が家は和食が多い。 「ここ料理おいしくて有名なんだよね」なんて友達と話し合いながら、過ごす楽しい時間。家の静かな日常とは真逆だ。華やかな音楽が流れ、皆おしゃれをして和気あいあいとしている。 (そうか、同級生と過ごすってこんななのか)と改めて思う。丈一郎さんとは世代も違う。芸能人が亡くなったニュースに彼が反応していて、私との温度差を感じることもある。彼には言わないけれど、お父さんみたいと思うことも。  もし、と思う。  もし会社社長の妻にでもなれば、こんな豪華な食事を毎日食べられるのだろうか。同世代で話が合う人と生活する、というのはどうなんだろう。  私はパンをちぎって、マーガリンを塗る。  それから、野菜スープを口にした。 「おいしい!」  突然の衝撃に声を上げてしまった。  それほどおいしいスープだった。 「ねー。何使ってるんだろうね」と友達が相づちを打つ。私はスープを注意深く見る。  細かく刻んだ野菜が浮かんでいる。玉ねぎ、にんじん、キャベツ……味付けはおそらくコンソメ。シンプルだけど本当においしい。じっくり煮込んでいるだからだろうか、味にまとまりがある。 (ん、でもこの野菜って……)と、引っかかるものがあった。どこかで見た気がする。何かひらめきそうになったところで。   「野田さん」  急に、横に人の気配がして、私はぎょっとした。横に上野さんがしゃがんでいた。会場でも人目を引く変わりよう。大人しい女子からギャルに変わったあの子だった。  黒いスーツの上下で、目力がすごい。ゴールドのアイシャドウとブラックアイラインでがっつり囲んだ目、つけまつ毛が私の3倍は長い。その目が、私を見上げている。 「上野さん……どうしたの?」 「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」  気を使ってこちらをうかがうように話す態度は、昔のままだった。
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