六幕『猫カフェの神様』

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 念願だった"愛撫"も"写メ"も叶った猫神は機嫌よろしく緩んだ頬はそのまま、トンッと壮琉(タケル)の膝から降りる。  彼がスマートフォンを操作している間に店外へと抜け出した。 「ニャン、ニャン、ニャーン」  猫カフェ"にゃんころりん"の店頭に置かれた大きな猫のぬいぐるみに別れの挨拶をすると、人気(ひとけ)(まばら)、街灯だけに照らされる商店街を歩く。  商店街を抜けて横断歩道を渡れば今度は神社へと向かう上り坂だ。  横断歩道に差し掛かったとき、商店街へと息を切らせて走って行く拓人(タクト)とすれ違った。 『どうよ? 俺と一緒の猫の方が可愛いだろ、拓人。アレルギー反応もないんだぜ?』 『なにその子…。ヤケになってどこの馬の骨ともわからない女をナンパしたのか? 僕の気遣いも台無しだな』 『は? 何言ってんの!?』 『壮琉(タケル)、お前はさ、お前の家と親父さんの後継者だよな? ガキじゃないんだからいい加減に理解してやれよ。説教してやるから待ってろ、そこの猫カフェでその女と』 『だから何? 女?』 『頭だけじゃなくて視力もどうかしてるのか? 添付してきた写真、返送するからよく見ろ。……その女に好きにさせるくらいなら僕がお前を抱く。コロッケだって、5個は食べ切れないから食べに来い』 f16606b6-c921-4b3a-ac2b-241b7fe13f33 『……!? 誰だよ、この女』  メッセージのその先は、壮琉も拓人も"可哀想"にはならない。二人の環境が整うようにと叶えられている。猫神は悪戯に笑うと「ただいまぁ」と鳥居を潜った。  吹く夜風には肌を冷やす寒さはない。秋に隠れて夏の残滓が気紛れに散歩していた。(終)  
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