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念願だった"愛撫"も"写メ"も叶った猫神は機嫌よろしく緩んだ頬はそのまま、トンッと壮琉の膝から降りる。
彼がスマートフォンを操作している間に店外へと抜け出した。
「ニャン、ニャン、ニャーン」
猫カフェ"にゃんころりん"の店頭に置かれた大きな猫のぬいぐるみに別れの挨拶をすると、人気も疎、街灯だけに照らされる商店街を歩く。
商店街を抜けて横断歩道を渡れば今度は神社へと向かう上り坂だ。
横断歩道に差し掛かったとき、商店街へと息を切らせて走って行く拓人とすれ違った。
『どうよ? 俺と一緒の猫の方が可愛いだろ、拓人。アレルギー反応もないんだぜ?』
『なにその子…。ヤケになってどこの馬の骨ともわからない女をナンパしたのか? 僕の気遣いも台無しだな』
『は? 何言ってんの!?』
『壮琉、お前はさ、お前の家と親父さんの後継者だよな? ガキじゃないんだからいい加減に理解してやれよ。説教してやるから待ってろ、そこの猫カフェでその女と』
『だから何? 女?』
『頭だけじゃなくて視力もどうかしてるのか? 添付してきた写真、返送するからよく見ろ。……その女に好きにさせるくらいなら僕がお前を抱く。コロッケだって、5個は食べ切れないから食べに来い』
『……!? 誰だよ、この女』
メッセージのその先は、壮琉も拓人も"可哀想"にはならない。二人の環境が整うようにと叶えられている。猫神は悪戯に笑うと「ただいまぁ」と鳥居を潜った。
吹く夜風には肌を冷やす寒さはない。秋に隠れて夏の残滓が気紛れに散歩していた。(終)
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