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以前ならその人達にどう思われるかというよりは羞恥心の強い慶一朗の事を思って手を繋ぐことしか出来なかったが、じっと二人で同じ方へと顔を向けていると、夏の夕陽が地平線へと姿を消した空が青に染まる。
上空から地上へと濃紺から薄い紫のグラデーションに染まり、太陽の名残を伝えようとするのか、一筋のオレンジが空に掛かる。
「綺麗なブルーだな」
「うん……ブルーアワーって言うそうだ」
キャンプに行っているときに見かけることの多い空模様だが、まさか今日見ることが出来るなんてと夢心地の顔で呟くリアムに慶一朗が素っ気ない態度ながらも頷き、日没前の夕焼け空も好きだと笑い、確かにあのオレンジと赤が混ざった独特の空色も好きだとリアムも同じ顔で笑う。
二人の眼下は青に包まれた日常からかけ離れた世界のように思え、今この世界に二人だけのような気持ちになる。
だが、そんな二人きりの世界でも交わす言葉は日常の延長線にあるもので、クロワッサンサンドが美味かったからまた作ってほしい、今度はローストビーフが良いとのリクエストに、レタスやキュウリを一緒に挟んでブラックペッパーを利かせようかと返す声に笑いが混ざり、キュウリを抜けという憮然とした声が再度返る。
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